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最優秀棋士に羽生!──史上初「名誉NHK杯」の価値

将棋の棋戦主催各社で構成する第39回将棋大賞選考委員会が2日、東京都渋谷区の将棋会館で開かれ、最優秀棋士賞に羽生善治2冠(王位・棋聖)を選んだ。5年連続19度目の受賞。
東京将棋記者会賞には勝浦修九段が選ばれた。(サンスポ)


▽最優秀棋士賞=羽生善治二冠
▽優秀棋士賞=渡辺明竜王
▽敢闘賞=郷田真隆棋王
▽新人賞=菅井竜也五段
▽最優秀女流棋士賞=里見香奈女流三冠
▽女流棋士賞=清水市代女流六段
▽升田幸三賞=佐藤康光王将
▽同特別賞=山崎隆之七段
▽名局賞=第24期竜王戦第4局
▽東京将棋記者会賞=勝浦修九段
(読売新聞)


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羽生、NHK杯史上初の10回優勝の記録。
初優勝の1988年はまさに「伝説」と呼ぶにふさわしい。
トーナメントのクジ運もまた天才の衝撃的な出現に味方した。

なんとトーナンメント戦の相手が、大山康晴(3回戦)、加藤一二三(4回戦 = 準々決勝)、谷川浩司(準決勝)、中原誠(決勝)と、現役の名人経験者4人(4人で全員である)になったのだ。それを18歳五段の羽生が次々と破って優勝する。作ろうとしても作れないようなストーリィだった。

1995年は空前絶後の七冠独占の年。ついでにトーナンメント戦であり早指しのNHK杯戦まで優勝している。すさまじい。

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将棋年間勝率の1位は中原さん。羽生は2位。1位を取っていない数少ない記録だ。今年中村五段がいい成績を上げて2位に入る。羽生は3位に落ちる。
だが中原さんとも中村とも羽生の記録は中身が違う。

中原さんも中村も若いときの、下のクラスでの記録だ。これは俊英ならみな記録する。日の出の勢いの新四段が棋戦初参加の年は、落ち目のロートルを相手に勝ちまくる。この十傑もみなそうだ。羽生の1987年の記録もそれになる。
だが2位の(今は3位)の羽生の記録は、七冠時代の年なのだ。つまりすべてがタイトル絡みで相手は一流のみ。その時期のこの記録はとてつもなくすさまじい。

今年、渡辺が絶好調で、それにちかい状態だった。竜王を保持し、羽生から王座を奪い、相手はみなA級棋士なのに一時勝率が8割まで行った。全盛期だろう。最強の季節だ。だが最終的には8割を切ってしまった。羽生のこの勝率は他の棋士の数字とは意味が違う。

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NHK杯戦歴代優勝者記録⇓


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誰が最優秀棋士になるか、今年ほどドキドキしたことはない。
羽生は名人を森内に取られて失冠した。マイナス1。
19年連続保持してきた王座を渡辺に取られた。これでマイナス2。

いい方では、廣瀬から王位を奪った。プラス1。
NHK杯を4連覇して、史上初の10回制覇、初の「名誉NHK杯」になった。プラス2。
そして最多勝。これでプラス3。

その他、細かいことはいくつかあるが、要は渡辺との一騎討ち。
ファンの意見も二分されていた。



ここまででは、格付最上位の竜王を8連覇し、羽生から王座を奪った渡辺と互角。
むしろ羽生から直接王座を奪っているだけに渡辺有利の声が高かった。

同じ「二冠」ではあるが、渡辺には最高位の竜王がある。
羽生は序列同格の「名人位」を失冠している。

渡辺は羽生の偉大な記録「王座19連覇」を、そこで止めた。
イメージ的には渡辺である。

渡辺は一時勝率8割まで届いていた。
そのうえに若手の中村がいたが、それとタイトルホルダーの勝率8割は意味が違う。



羽生は最多勝である。最後に豊島に並ばれて同率1位になってしまったが、豊島は前記したような伸び盛りの若手。
40を越えたタイトルホルダーの最多勝がいかにすごいことか。
さらにはあの地位にいて「最多対局」でもある。

先日、今年度最終局で豊島が負けて勝ち星が同点1位だったのはプラスに作用した。
2位とはだいぶ印象がちがう。
また一時は勝率8割を越えていた渡辺が敗れて勝率7割台に落ちたのも関係あろう。

将棋ファンの意見も真っ二つに分かれていた。
羽生で決まりだ、渡辺で決まりだと両者のファンが激しくやりあう。

私の気持ちは、「羽生にとって欲しいが、現にその羽生から王座を奪って記録を止めたのだから、今年は渡辺かなあ」というもの。

しかしそこからの羽生の活躍がまた目覚ましかった。
トーナンメント制のNHK杯戦を10回優勝しての「名誉NHK杯」は、あの大山ですら達成できなかった史上初の記録である。その決勝戦の相手は渡辺だった。それに勝った。これはプラス。

NHK杯戦は1951年から61回の歴史がある。最初はラジオだった。ラジオで聞く将棋というのはちょっと感覚がわからない。将棋盤を手元において、ファンは読みあげられる棋譜を並べたらしい。
木村名人の優勝で始まり、升田、大山、加藤、中原、米長と錚々たる棋士の名が並んでいるが、誰も10回優勝は成し遂げられなかった。「名誉NHK杯」は架空の称号のようだった。しかしついに羽生がその冠を戴いた。



私は渡辺も好きだ。
だけどこういう形になると羽生を贔屓している自分を知る。

棋戦に関係している新聞社の記者等が中心になっての投票で決まる。
『将棋世界』に載る銓衡会の意見が楽しみだ。

みな「今年渡辺が取らなきゃいつ取るんだ」とは思ったろう。渡辺の価値は最高位の竜王を保持していることしかなかった。ところが今年、ついに羽生から王座を奪って二冠になった。勝率も8割に届くほどだった。今までで最高の年である。

しかし投票権を持つ記者のあいだにも、「それでも棋界は羽生を中心に廻っていた」という感覚があったのではないか。楽しみに記事を待ちたい。



今年は名人を森内から取りもどすので三冠に復帰するだろう。
竜王戦が早々とトーナメントで橋本に負けて不利になっている。直近の敗戦になるこの1敗は痛かった。これで年度勝率が7割を切ってしまった。なんとか敗者復活枠から勝ちあがって欲しい。
とにかく羽生ファンとしては、対渡辺の成績が悪いことがたまらない。竜王位に二度挑んで二度敗れている。なんとしても渡辺から竜王位を奪って欲しい。

さて、名人戦開幕までもう少し。第一局は4月8日。椿山荘。ストレートで奪還してほしい。

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【追記】──歴代最優秀棋士

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中原時代、谷川時代を経て、羽生が王者の時代になる。
一矢を報いたのが、谷川、森内、佐藤の三人だけなのがよくわかる一覧だ。
  1. 2012/04/02(月) 19:00:53|
  2. 将棋
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佐藤康光、王将位奪取!──終始完璧な指し回し

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3月8日、9日に、河津桜の咲く静岡県河津町で行われた王将戦7番勝負第五局は、佐藤が勝ち、4勝1敗で久保王将から王将位を奪取した。佐藤の王将位は2002年以来だから10年ぶりになる。
2009年に無冠になったが、それは久保に棋王を取られてのものだから、久保から奪っての復活は念願だったろう。

私は振り飛車党の雄・久保のファンでもあるので、彼も応援していたし、7番全部見たかったけれど、今回の佐藤の充実ぶりは半端ではなかった。それは久保の敗戦の弁「エースで勝てなかったので」が物語っている。後手番ゴキゲン中飛車を完璧に粉砕した。

振り飛車と敵対する居飛車党の代表に渡辺竜王がいる。「ゴキゲン中飛車を消滅させる」とまで口にしている。この強気が渡辺の魅力だ。
だが渡辺は昨年、久保棋王に挑み、先手番三間飛車、後手番ゴキゲン中飛車に敗れている。

佐藤は渡辺とちがい居飛車しか指さない棋士ではない。後手番三間飛車もやったりする。
だが今回ほど見事で、そして完璧なゴキゲン中飛車潰しは見たことがない。
振り飛車党を心胆を寒からしめたのではないか。



先日十数年前の『将棋世界』を読んだ。ふるい将棋雑誌を読むのは私の楽しみだ。
A級が羽生世代で占められ、ほとんどが二十代だった。渡辺はまだ奨励会だった。

時が流れて今、やはり羽生世代がほとんどで、みな四十前後。二十代は渡辺ひとりのみ。
羽生世代というのは歴史に残る特別な世代だ。20年前から今に至るまでずっと中心にいる。こんなことはかつてなかった。
その中でもビッグスリーが、羽生、佐藤、森内になる。

久保は羽生世代より5年ほど下の、次の世代になるが、いま棋王戦でも郷田に1勝2敗と追いこまれている。これは5番勝負だから角番だ。郷田もまた羽生世代の雄。久保が失冠すると、七冠のうち六冠を羽生世代が占めることになる。するとまた唯一羽生世代の挑戦を退けて竜王を維持している渡辺の強さが目立つ。



雨の日に、パソコンで作業しつつ、インターネットで将棋のタイトル戦を観戦できるのはしあわせなことだ。
王将戦が終ると春が来る。春になると名人戦が始まる。将棋にも季節がある。
  1. 2012/03/10(土) 02:03:44|
  2. 将棋
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雨の日の棋王戦──ニコ生解説は森下卓──最後まで見られるか!?

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今日は、久保棋王対挑戦者郷田九段の棋王戦第二局。
ニコニコ生放送が中継している。
雨の日のネット将棋観戦。

解説の森下卓九段の人柄のよさが滲み出て微苦笑連発。
6回タイトルに挑んで1度も取れなかった。これは珍記録。
羽生がいなかったらタイトルを取れたひとの筆頭だ。
いつかは必ず、ひとつは取ると信じていたが……。

森下九段のことを思うと、私は反射的にメイショウドトウを思う。テイエムオペラオーの蔭でG1連続2着を続けたマル外だ。だが、ついに、メイショウドトウは宝塚記念でテイエムオペラオーを倒し、G1制覇をした。なのに森下は……。
竜王、名人は無理にしても、せめて棋聖とか棋王とか、そのへんでいいから、一度はタイトルを取らせたかった。この「取らせたかった」という言いまわしがいかに傲慢かは知っているので恥じいるが、ほんと、森下さんには一度でいいからタイトルを取って欲しかった。全盛期の強さも知っているし、そう思わせるだけの人柄だった。



でも羽生の牙城を崩してサトウ──いまサトウ・ハチローのことを書いているので「さとう」で変換すると最初に「サトウ」と出る(笑)──佐藤や森内はタイトルを取ったのだから、森下は彼らと比すとなにかが足りなかったのか。「無冠の帝王」「シルバーコレクター」あまりうれしくない称号だ。

無料会員なので、夕方からの決着間近になったら「プレミアム会員」とかによって追いだされる。せめて今の間だけでも森下の解説を楽しんでおこう。

まあニコ生を追いだされても棋譜中継は見られるから不満はないのだけど。便利な時代になったなあ。

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15時からのテレ東競馬中継を経て復帰。テレ東はいいな。フジとはちがう。

おお、まだ見られるぞ! ラッキー!
私の席は「1F右 前方-55番」なのだとか。
今朝もいつものよう3時起きで、ここには朝9時の開始前から入っているから番号は若い。でもこれって、こんな若い番号から「タダで長々といやがって!」と追いだされるんじゃなかったか。

現在来場者数81164人。昼前、5万人いなかったから、だいぶ増えている。
これから終盤にかけて益々増えるから「プレミアム会員」に追いだされるのは時間の問題だ。
しかしこれをやられると、たしかに「月額500円なら契約しようかな」と思うようになる。

形勢は郷田が1勝を返しそう。5番勝負だからそのほうがおもしろい。
でも王将は1勝3敗で佐藤が奪取だろうから、ここは久保に防衛して欲しいけど。



17:04、現在観客90745人。まだ追いだされない。終盤。久保、投了寸前。もしかしたら最後まで見られるか。ワクワクドキドキ。wkwkdkdkって書いた方がいい?

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17:16、久保棋王、投了。郷田、居玉のままで圧勝。三間飛車早仕掛け、息切れの、久保の不出来な将棋。

来場者数92818人。追いだされることなく最後まで見られた。ニコニコ生放送様、ありがとう。必ず有料会員になることを約束します。

森下さん、解説おもしろかったです。もうひと花咲かせてください、期待しています。
  1. 2012/02/25(土) 12:09:39|
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王将戦、佐藤3連勝!──天空に築く銀の城郭

佐藤が三連勝。強い。強すぎる。三局とも文句なしの完勝だ。
本局も圧勝パターンだった。

序盤、解説陣は相穴熊と予想したが、佐藤は力強く急戦に持ちこむ。
迷いがなかった。研究してあったのだろう。

三枚の銀によって築かれたこの天空の城郭は、ごきげん中飛車攻略として歴史的絵図となろう。
5六金となったら終る。久保は4五馬と切らざるを得なかった。そこでもう決まっていたのだろう。

第四局は久保王将の故郷、兵庫県加古川市で開催される。佐藤が四連勝で奪取するのか、故郷で久保が意地を見せるのか。

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特集:将棋 王将戦第4局 棋士のまち、熱く 決戦の舞台は加古川「鶴林寺」--22・23日

 ◇久保2冠、地元で巻き返しへ
 加古川市出身の久保利明2冠(王将・棋王)が佐藤康光九段の挑戦を受ける「第61期王将戦七番勝負」の第4局(毎日新聞社・スポーツニッポン新聞社・加古川市・市ウェルネス協会主催、BAN-BANネットワークス共催、日本将棋連盟・鶴林寺協力)が22、23両日、加古川市加古川町北在家の刀田山・鶴林寺で行われる。

 決戦の場・加古川市は多くの出身・在住プロ棋士を抱える。今年度からは若手の登竜門として日本将棋連盟公式戦「加古川青流戦」(毎日新聞社など後援)を主催、市在住の船江恒平四段が初代優勝者となるなど、名実ともに「棋士のまち加古川」となりつつある。昨年に引き続き地元棋士によるタイトル戦とあって、本番を前に市民の将棋熱も日増しに高まっている。

 加古川市ゆかりの棋士が多く活躍し、将棋関連イベントも多い加古川市は09年11月の「将棋の日」イベントをきっかけに、「棋士のまち加古川」をキャッチフレーズに将棋を軸にした地域活性化を目指し始めた。
 これに先立ち、09年5月には加古川、高砂両市の出身・在住棋士6人(当時)を応援する「東播磨地区プロ棋士後援会」(会長・樽本庄一市長)が発足。さらに久保2冠が王将・棋王の奪取・防衛を果たしたことなどが機運を後押しした。(毎日新聞より)
  1. 2012/02/17(金) 17:50:34|
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羽生、名人挑戦決定!──4-0で奪還せよ

羽生2冠が名人戦挑戦 将棋A級順位戦で8連勝

 将棋の第70期名人戦A級順位戦8回戦は1日、大阪市の関西将棋会館などで行われ、羽生善治2冠(41)が谷川浩司九段(49)を破って無傷の8連勝とし、最終9回戦を待たずに森内俊之名人(41)への挑戦を決めた。

 今期のA級は、7回戦終了時点で羽生2冠が7勝0敗で首位を独走。2敗で渡辺明竜王(27)と谷川九段が続いていたが、この日の結果で2人の挑戦の可能性が消えた。

 羽生2冠が名人位返り咲きを果たせば、通算タイトル獲得数が81期となり、史上1位で並んでいた故大山康晴15世名人を抜き、単独1位となる。

 7番勝負は、4月10日に東京都文京区の椿山荘で開幕する。スポニチ

http://www.sponichi.co.jp/society/news/2012/02/01/kiji/K20120201002553620.html

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 羽生はこのあと郷田にも勝ち、A級リーグ戦9戦全勝(過去に唯一森内のみ達成)で昨年失冠した名人位に挑戦して欲しい。森内から4-0で奪還してくれと願う。それが正当な実力だ。森内は王将リーグ全敗、2011年の勝率3割等、名人位を穢している。が、ことこの棋戦に関してのみ強いのがこのひとなのでわからないけれど……。

 羽生は2008年に森内に挑戦して名人位を奪還するとき、順位戦は8勝1敗。後半6連勝している。今回の8連勝で通算14連勝。A級順位戦での連勝記録は谷川の15連勝。この記録は名人在位期間を挟んでも成立するので、次の対局で郷田に勝つと谷川の15連勝に並ぶことになる。だが2008年の唯一の1敗が郷田。今年は棋王挑戦者にもなってのっている。さて「将棋界の一番長い日」3月2日はどんな結果になるか。

  降級2名は高橋、丸山、久保に絞られている。最終局で久保が丸山に勝って残留が私の願いだが。

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【附記】──ずいぶんと強引──2/2.18.00

 棋譜が出たので並べてみた。ずいぶんと強引な指しかただった。大きく勝ち越している谷川相手だからやったことか。そして年齢的に下り坂であり(とはいえ順位戦はここまで好調だったが)、専務理事となって多忙な谷川相手だから勝てたような将棋だった。棋譜を再現していて、私には羽生が有利とは思えなかった。案の定、『激指10』に解析させると、思った通りずっと谷川が優勢だった。羽生が剛腕で強引に無理を通してしまったような将棋である。

 こういうのを見るとやはり渡辺に対する苦手意識を感じる。この将棋は、不利な羽生がそれをものともせず力尽くで勝ってしまった一番だ。渡辺には逆の形が多い。どう考えても羽生有利な局面なのに決め手を闕き、渡辺の粘りでひっくり返されてしまう勝負がいくつもあった。それを羽生がやることはよくあったが、やられることはめったにない。なぜか渡辺相手にはそれが連発する。渡辺の方にももう羽生に対する畏怖がないから出来ることだろう。それこそ餘裕で「粘っていればこのひとはこける」と待っているのだ。対谷川を対渡辺と比較して、あらためて「人間の指す将棋」ということを考えさせられた棋譜だった。

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【附記.2】──4-2で森内名人防衛。
  1. 2012/02/02(木) 05:41:08|
  2. 将棋
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王将戦第二局──コピーライター原田八段の思い出──久保利明・さばきのアーティストに流れる淡路不倒流の血

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今日は王将戦第二局二日目。久保利明王将対佐藤康光九段。先日の第一局がおもしろかった。今日のも凄い展開になっている。挑戦者丸山が弱くてつまらなかった竜王戦とはちがって充実している。



久保の愛称〝さばきのアーティスト〟が普及してきたとき、原田八段のことを思い出した。将棋界の名コピーライターである。死後、贈九段だが、なじみのある八段で書く。

中原自然流、内藤自在流、大内怒涛流、有吉火の玉流。原田八段の名づけたこれらに親しんで育った。注目される新人が出て来ると、原田さんがなんと名づけるか注目した。これらは成功品。

ぜんぶが成功しているのではない。特に米長さわやか流なんてのは的外れだった。あのひとはさわやかではない。後に自ら泥沼流を使いだすが、こちらのほうがあっている。

晩年のものでは森内優駿流なんてのもひどい。森内は母方の祖父が京須八段だ。将棋界には珍しい名血だと言いたいのだろうが、もうひとつピンとこない。



形に囚われず斬りこんで行く谷川の終盤を〝光速の寄せ〟とし、普及していった谷川光速流は、谷川の輝く才能を表した最高にかっこいいコピーだが名づけ親は原田さんではない。それは元『将棋世界』編集長の大崎善生さんも書いている。多用して広めたのは編集者だった大崎さんだが最初に使ったのはちがうひとだ。誰もが納得し絶讃した最高の愛称である。とにかく原田さんは無関係。

いまWikipediaを見たら原田さんの項目で、谷川光速流と名づけたと書いてあった。ほんとWikipediaはまちがいが多い。このへんはかなり初歩の知識なのだが。

光速流という表現のかっこよさには棋士もみな憧れたようだ。森内は一時その堅実な棋風から「鉄板流」と呼ばれた。光速流のかっこよさと比して「泣きたくなった」と述懐している。たしかにね「鉄板流」と言われてもうれしくない(笑)。
原田さんの名づけた優駿流も、どなたかが名づけた鉄板流も、けっきょくは使われず消えて行く。名づけたからといってファンに浸透し支持されるわけでもない。




羽生にはそれがない。ないことがよくわかる。凄すぎて、そんな「なんとか流」なんて範疇を超えているのだ。
私も、将棋界で驚いたのは谷川の出現までであり、羽生になるともう凄すぎてわからない。万能すぎて色がない。「なんとか流」とは色をつけることであり、色を超越している羽生をそんな旧態のくくりで縛るのは不可能だ。



〝さばきのアーティスト〟は、軽やかな独自のさばきを見せる久保の振り飛車を見事に表現したコピーだ。それまでの「なんとか流」でないところもあたらしい。

ところがこの〝さばきのアーティスト〟は、局面が不利になると、そこからすさまじいまでの粘りを発揮する。軽やかなさばきとはあまりに違うその落差は話題になった。さんま風に言うなら「竹を割ったような性格なんやけど、中に餅が入ってた」になる。
表の顔は爽やかな〝さばきのアーティスト〟だったが、裏の顔は師匠淡路から引き継いだ〝不倒流〟だったのである。淡路はもう粘って粘って粘りぬいて勝つ。「長手数の美学」なんてわけのわからん賛辞もあった。将棋の平均手数が120手ぐらいのころ、決着まで200手を越すのはざらだった。決め手がないとしか思えなかった。私はもちろん短手数の「光速」を支持した。谷川はその平均120から140手の時代に50手とか、とんでもない斬新なことを始めたのだった。あの衝撃は忘れがたい。

谷川のやったのはプロレスで言うならハイスパートレスリングである。それまでは「60分フルタイム」が美とされていた。序破急がみな含まれた様式美である。谷川光速流とは、いきなり大技が炸裂し動きっぱなしで、10分以内に決着のつくハイスパートレスリングだった。このおもしろさを知ったら様式美プロレスはやたらのっさりもっそりしているように見えてしまう。その旧態然ののっそりもっそりの代表が淡路不倒流だった。



久保の表の顔の〝さばきのアーティスト〟は谷川光速流の系譜だ。不可能と思われるところから強引とも思える過激な局面打開を試み、それを繋いで手にしてしまう。だから〝さばきのアーティスト〟。伸び盛りの若手棋士もそう呼ぶ。アーティストというところにプロ棋士からの賞讃が感じられる。だがしくじって追い詰められると、もうひとつの淡路不倒流が顔を出す。

一般に将棋界の師匠と弟子は名前だけの場合が多い。師匠を決めないと奨励会に入れない。だから師匠を決める。名前だけの関係も多い。あまり将棋を教えてもらうことはない。入門の時に儀礼として教えてもらい、あとは数局程度、公式戦で何度か対局し、とかそんなものだ。

久保は淡路の将棋教室に通い幼い頃から手取り足取り教えてもらっている。なんと幼児の時に19枚落ちから教えてもらっているという。上手は王様だけの形だ。その後も六枚落ち、大駒落ち、何百局も教えてもらったと語っていた。こんな師匠と弟子はまずいない。苦しくなったとき、〝さばきのアーティスト〟をかなぐり捨てた久保が「淡路不倒流」に変身するのは擦りこまれた血の重みなのだろう。これぞ師弟の絆である。師の粘りが弟子のピンチに役立っている。



淡路不倒流は原田さんの命名だ。〝さばきのアーティスト〟というコピーは原田さんの感覚とは程遠く、もし御存命であったとしても原田さんには命名できないセンスだったろう。だがその中にも原田さんの名づけた〝不倒流〟の血は脈々と息づいている。生きている。
原田さんのコピー作品として、マイナーだけれど、淡路不倒流と森安達磨流は、棋風を適確に表した名品だ。


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午後7時16分、124手までで佐藤の勝ち。二連勝。すごい将棋だった。佐藤のすさまじい読みが炸裂していた。二枚龍に追われ、駒損で、見た目には久保有利なのだが、しっかりと佐藤は敵玉までの距離感を計り抜いていた。しかし80手から100手まで久保が追い詰めている。ひっくり返されたのはそのあとだ。最後は追い詰めだが即詰みである。久保は指運がなかったが、諦めず応じた佐藤のつよさか。前局に続いての名局である。すばらしい。ふたりの熱戦で王将戦は盛り上がりを見せている。
いい将棋を見ると一日が豊かになる。第三局目が楽しみだ。

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【附記】──〝玉損の攻め〟──原田泰夫 

将棋連盟会長を務め、名コピーライターとして将棋の普及にも大きな功績のあった原田八段ご自身のコピーは〝玉損の攻め〟だった。これまたどなたが最初に名づけたのか、なんともかっこいいコピーだ。
将棋は王様(玉)を取りあうゲームである。玉を取られたら終りだ。〝玉損の攻め〟とは、「健康は命よりも大事」的な成立しない比喩になる。それがまたなんとも原田さんの激しい攻め将棋を顕していて、じつにいいキャッチコピーになっている。

私が将棋に夢中になったときはもう原田さんは好々爺とした解説が売り物になっていた。私は激しい攻め将棋の〝玉損の攻め〟を知らない。棋譜で知るのみだ。

原田さんの解説でいちばん印象に残っているのは、香頭の玉を否定していたことだ。将棋の筋として常に強調していた。その解説を聞いて育ったから、それを根底から否定した〝米長玉〟にはおどろいた。私は米長玉のとんでもない発想だけで米長邦夫を認める。むかし先崎にインタビュウする仕事があったときも、真っ先に訊いたのは彼が米長玉をどう評価しているかだった。
  1. 2012/01/27(金) 13:34:27|
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リコー杯女流王座戦アクセス増加--のうれしさ

あいかわらずマイナーブログとしては異常にアクセス数が多く不気味な思いをしている。「野田聖子ファイル」だ。いまだに原因がわからない。なにがあったのか?  ただ私なりに本音であり力作?と自負しているから、珍奇なアクセス異常ではあれ怖くはない(笑)。受けて立ちます。



その不気味さを調べていたら、「リコー杯女流王座戦--奨励会1級・加藤桃子女流王座に!」へのアクセスが増えているのを知った。うれしい。加藤桃子の女流王座就任を書いた記事は多いが、短文のおざなりなのが多かった。私なりに誰にも負けないぐらいの熱を入れて書いたつもりでいる。いやもちろんもっともっとすばらしい将棋ファンのブログがあるのは承知している。私のは将棋専門ブログではなく片手間だ。でも並以上の水準と知識だとは思っている。今回の文も調べ物なしで一気に書いた。それから確認のための調べ物をした。それが将棋ファンからそれなりに読んでもらっているらしい。うれしい。

王座になって、桃子ちゃんはどんな朝を迎えたのだろう。王座についた実感は、これからじんわりくるんだろうなあ。天国のお父さんに報告しただろうか。なんだかもううれしくてたまらない。
  1. 2011/12/14(水) 13:05:22|
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リコー杯第一期女流王座戦のポスター--日本人よ、この美を堪能せよ!

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これは将棋史上に残る美しい傑作ポスターだ。凛とした清水市代、清冽な加藤桃子。和服の清水のりりしさ、加藤の少女らしいふくよかさ。これぞ大和撫子、究極の美。畳、正座、座布団、将棋盤。世界に誇れる完成度。将棋ファンすべての誇り。すばらしい! このポスターを作ったリコーに、すべてのスタッフに拍手。
  1. 2011/12/14(水) 12:43:09|
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リコー杯第1期女流王座戦──奨励会1級・加藤桃子、女流王座に!──凛とした清水市代、清冽な加藤桃子の美!

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奨励会員の加藤が初代女流王座に 将棋リコー杯

3勝2敗で清水六段を破る将棋の第1期リコー杯女流王座戦(特別協力・日本経済新聞社)の五番勝負第5局が12日、東京都渋谷区の将棋会館で指され、先手の加藤桃子奨励会1級(16)が清水市代女流六段を破り、対戦成績3勝2敗で初代女流王座を獲得した。女流棋士資格を持たない奨励会員が女流タイトルホルダーとなるのは初めて。
日本経済新聞 18時5分。

棋譜は清水が投了し、加藤が初代女流王座に着いた瞬間。

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五番勝負。第一局は10月22日。加藤桃子を応援していた。2勝1敗とリードしたとき、4戦目の12月6日に決めてしまえと願ったが、有利な将棋を、歩の打ち所をまちがえて逆転負けした。5六歩と控えて打てば完勝だった。それによって即詰みに討ちとらねばならなくなった。詰まなかった。今日は2勝2敗からの決勝戦。泣いても笑っても今日で決まる。緊張した。私が緊張してもしょうがないが(笑)。



私は羽生を応援している。二十代の渡辺に負けたときは落胆した。谷川の復活を願っている。イチローの200本安打記録が途絶えたのを嘆き、なんとか武豊の24年連続GⅠ勝利記録が達成されないかと祈っている。
そういう保守派?としては、羽生と同世代の最強女流棋士として長年棋界に君臨してきて、ここのところ立て続けに〝出雲の稲妻〟里見香奈に敗れて無冠になってしまった清水市代を応援するのが筋だろう。

清水は無冠になったとはいえ今年も、倉敷藤花戦の挑戦者になり(里見に2連敗で敗れる)、年明けから始まる女流名人戦も挑戦者決定リーグ9戦全勝で挑戦者になっている。元々は全冠保持していて「女羽生」と言われた最強女流棋士だ。ここのところの失冠は、いわば「2着続きのブエナビスタ」みたいなもので、本来なら私は清水を応援せねばならない。



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これは将棋史上に残る美しい傑作ポスターだ。凛とした清水、清冽な加藤。和服の清水のりりしさ、加藤の少女らしいふくよかさ。これぞ大和撫子、究極の美。世界に誇れる完成度。将棋ファンすべての誇り。すばらしい!



ましてこのリコー杯は、今回が創設されての第一期。優勝賞金は女流最高の500万円(マイナビ女子オープンと同額)。第一期なのでトーナメント戦。勝ち上がったふたりの決勝戦が女流王座を決める5番勝負になる。最強清水の復活の舞台として最高ではないか。いつもなら清水を応援したろう。



が、加藤桃子の魅力はそれをしのいでいた。
現在、奨励会1級。だいたい女子は3級ぐらいで頭打ちになる。日本中の将棋の天才が集う奨励会で、ここまで来るだけでたいしたものなのだ。女子としては図抜けている。

3級ぐらいで頭打ちになった女子は、奨励会を退会し「女流」になる。男子に混じって指す奨励会出身は3級ぐらいでも女流としてはトップクラスだ。すぐにタイトル戦に絡み、タイトルを奪取したりする。それは過去にも千葉や矢内が証明している。そもそも初代女流名人の蛸島さんも奨励会出身だ。林葉も中井も奨励会に在籍していた。タコちゃんだけさんづけしてしまった(笑)。しょうがない、別格だ。

一方、奨励会とは関わらず純粋に女流としての道を歩み、最強の座についたのが清水になる。高校生の頃からつよいひとだったが、このひとは純粋なアマチュア出身だ。眼鏡を掛けていた高校生時代の清水をよく覚えている。
林葉、中井と三強と呼ばれていたが、いつしか一強になっていた。獲得タイトル数は群を抜いている。これはこれで「奨励会出身(=退会者)ではないという誇り」をもっていることだろう。

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いま女流棋士最強の里見は、逆に女流の枠を飛び出して奨励会に挑戦した。これも立派だった。女流として栄誉栄華の中にいるのに、女子として初のプロ棋士(奨励会三段リーグを勝ち抜いて四段になったものだけに与えられる称号)に挑むべく19歳で奨励会1級試験に挑んだのだ。奨励会2級の連中との勝負での勝ち越しが合格ラインだった。その相手の中に16歳の加藤桃子2級もいた。

里見は18歳で女流三冠を達成したヒロインだった。日本将棋連盟機関誌の『将棋世界』でもカラーグラビアで扱われている。男子高段者との特別対局も組まれたりしている。
奨励会とは無給の棋士養成所である。華やかな女流三冠とは対照的な場だ。そこで加藤は腕を磨いている。女として初のプロ棋士になるために。

その自分たちの研鑽の場に、女流三冠が降りてくる。敢えてその場に挑んでくる里見も立派だが、迎え撃つ加藤も燃えていたろう。自分は奨励会の一員なのだと。自分には「女流」という肩書きはないのだと。

里見の奨励会1級合格条件は、2級の3人と指し、2勝することだった。里見は2勝1敗で合格し、奨励会1級となる。このとき里見に唯一土をつけたのが加藤桃子2級だった。後述する伊藤沙恵は里見に敗れている。

今回の奨励会員加藤桃子の王座戦登場も里見が作ったもの、とも言える。
林葉直子を始め、女流棋戦を盛りあげるため奨励会と女流のかけもちを許されたものも過去に何人かいた。しかし弊害もあり禁止された。
それが今回、里見三冠の女流と奨励会かけもちを認めるという特例措置から、その他の会員にも全面的に認める、ということになった。これがなければ加藤と伊藤の活躍はありえなかった。



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加藤桃子は父親から将棋の手ほどきを受けている。父は高校教諭。将棋部の指導をしていた。こどものとき、一時奨励会に在籍している。母もアマチュア女流名人戦に出場したほどの強豪だ。父母は将棋を通して知り合い結婚した。そして生まれてきた桃子は英才教育を受ける。すぐに才能を発揮して、父の夢を叶えるため小学校6年の時、奨励会に入る。

その父が、3年前、桃子が13歳の時に急逝した。51歳だった。女流に転向すれば華やかにやって行けるだろうに、桃子はプロ棋士の四段になることにこだわる。「お父さんとの約束だから」。応援せずにいられるか。



今年から規約が変わり、「奨励会在籍の女子は女流棋戦に出場できる」とされた。当然のごとく加藤桃子と、同じく1級に在籍しているライバルの伊藤沙恵は女流棋士を破って勝ち上がっていった。準決勝でふたりは対戦した。トーナメント組み合わせによっては十分に加藤と伊藤の決勝戦もありえた。ヒロインになっていたのは伊藤かも知れない。
(ここまですべて人名を変換できたGoogle日本語入力が「いとうさえ」だけ正しく変換出来なかった。残念。がんばれ伊藤沙恵、もっとメジャーになれ。)

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初戦で、女流王将だった千葉四段を破る。千葉もかつては奨励会に所属していた。二回戦で、里見三冠を破った岩根二段を破る。岩根もかつて奨励会に所属して1級まで昇進している。これは女子の最高記録になる。
この時点での加藤も伊藤もまだ2級。このあとの奨励会の成績で1級に昇級する。

女流棋界の錚々たるメンバーが揃っている。このトーナメントは「本戦トーナメント」である。この前に一次トーナメント、二次トーナメントがあった。タイトル保有者や清水、中井、矢内のような実績のある棋士はみな二次トーナメントから。加藤や伊藤はアマ代表も参加している一次トートナメントから勝ちあがってきた。
そのふたりが準決勝でぶつかっている。ここまで奨励会におけるふたりの戦績は加藤の5勝4敗。ここで勝って6勝4敗となる。
これらを見れば、いかに加藤がいま充実しているかが解る。本物なのだ。偶然やシンデレラガールなのではない。



現在女流将棋界は里見の一強時代だ。清水は勝ちまくっているが、どうしても里見には勝てない。これは大山が全棋士に強いのに中原にだけは勝てず中原時代になってしまったのと似ている。だからもう清水時代の復活はないのだろう。むしろ40代になりながらあれだけ勝ちまくっていることに感動する。

里見以外のタイトルホルダーには、マイナビ女子オープンと女流王位の二冠を保持していた甲斐智美がいる。これはともに清水から奪ったものだ。清水がタイトルを独占していたから清水を負かせるようになればタイトルに手が届いた。その甲斐から女子オープンのタイトルを奪った上田初美がいる。清水が復権するとしたらこのあたりだろう。上田は清水との対戦成績は圧倒的に悪い。だが清水は里見には勝てない。いや来年早々女流名人戦が始まるのにこんなことをいま言っては失礼か。

私は里見の将棋が好きだ。男っぽい力将棋だ。ゴキゲン中飛車での攻めにはぞくぞくする。それでいて、ふっと手を戻したりする。そのへんの距離感が女流では抜けているように思う。これからさらに強くなるだろう。



その里見に勝てる逸材が登場した。加藤桃子だ。これまた男っぽい。ゴリゴリ音がするような攻めをしたかと思うと、詰みなしと読みきって相手に手を渡したりする。今日の決勝戦も最後はそれになった。盤にかぶさるようにして躰を揺らしての長考など、とても16歳の娘には見えない。同じ加藤だから一二三さんの系列か(笑)。

里見も一強時代はつまらないだろう。奨励会入会試験でも敗れた真のライバルが檜舞台に登場してきたのだ。ふたりが争うタイトル戦もそのうち実現する。
でも加藤の狙うのは女流のタイトルではない。父の夢だったプロ棋士だ。女子としてまだ奨励会で段持ちになったのはいない。加藤桃子と伊藤沙恵はいま、手の届く所まで来ている。

これまで奨励会で1級まで進んだ女子は、蛸島彰子、岩根忍、甲斐智美のみだった。林葉、中井、矢内、千葉(旧姓・碓井)らも届いていない。その3人はみな女流に転身した。女子から初のプロ棋士という夢は、加藤、伊藤、そして転入してきた里見の3人にかかっている。

亡き父の夢を叶えるまでの道は遠い。果たしてどこまで登れるか。女流での成績とは関係なく、奨励会員として応援してゆきたい。
今夜は、天国のお父さんもよろこんでいるだろう。お母さんもうれしいだろうなあ。娘が頂点に立ったのだ。
おめでとう。ますますの活躍を!

女子の奨励会における最高クラスは、蛸島彰子が優遇措置を受けて初段になっているが、厳密には最高位は1級である。私はそう解釈している。よって「女子で初段まであがった者はいない」とした。

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追記・──上記、「お父さんとの約束」と書いたが、この16歳の娘さんは今回の王座戦での記者会見では、きちんと「父との約束ですから」と「父」と言っている。礼儀正しく言葉遣いがしっかりしているのを複数のひとが誉めていた。育ちがよいのだ。亡き父の薫陶か。
現在は静岡県で暮らす母と離れ、母の実家の東京で祖母とのふたり暮らし。高校は通信制で日中は将棋の勉強に没頭している。一緒に暮らすおばあちゃんも今回の優勝はうれしかったことだろう。

リコーは長年将棋普及に熱心な会社だった。学生強豪も数多く入社している。今回初めて自社の冠をつけた棋戦を作ったのだが、あれだけの社会人強豪チームを擁する会社としては遅すぎるぐらいだった。第一期の女流王座にふさわしいひとを得たと思う。望ましい大団円だ。



追記・2──12月13日。今日はさすがにニューヒロイン誕生ということで多くの紙がこのことを報じていた。サンスポでは競馬に強い同紙らしく、デビューから2戦目でG1を勝ったジョワドヴィーヴルに掛けて「強い乙女」を強調していたが、将棋ファンに伝わったかどうか(笑)。



追記・3──女流棋界の現状──2012/1/6

無給の奨励会と対比する文章の綾で「華やかな女流棋界」のようになっているので補足。
女流棋界はたいへんな世界である。対局料が安く、対局数そのものがすくない。対局から得る収入は年に30万円から50万円という女流棋士はざらだ。普及のためのイベントに出て稼いだり、親掛かりのひとも多い。年収1千万以上になるのはタイトルを複数所持する里見三冠クラスのみ。
その辺はわかって書いているのだが、なんとなく客観的に読むと、やたら女流棋界を華やかな世界とかんちがいしているヤツが書いているような気がしたので(笑)蛇足ながら。
  1. 2011/12/12(月) 20:30:13|
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将棋王座戦・羽生を超えた渡辺──途絶えるイチローの記録

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27日朝から山形県天童市の松伯亭あづま荘で指されていた第59期将棋王座戦(日本経済新聞社主催)五番勝負第3局は、午後10時45分、147手で先手の挑戦者、渡辺明竜王(27)が羽生善治王座(41)を下し、3連勝で王座を奪取した。羽生前王座の連覇記録は19でストップした。

渡辺新王座は、7連覇中の竜王と合わせ、自身初の二冠となった。羽生前王座は1992年から保持していたタイトルを失い、王位・棋聖の二冠に後退した。羽生の王座19連覇は同一タイトル連覇の歴代最高記録。20の節目を目前にして途絶えることになった。(日本経済新聞)


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27日は王座戦5番勝負の第3局。朝9時からインターネットで生中継。
開始から観る。決着がつくのは午後9時ぐらいだから途中は抜けてもいいのだが横歩取りから激しい展開になったので目が離せない。午後にはもう羽生が優勢になり、あっさり1勝を返しそうなので、その瞬間を見ようとパソコンから離れられなくなった。勝っても1勝2敗で角番に変りはないのだが、とにかく急場は凌ぐ。気分も違ってくるだろう。

写真の局面で午後6時の夕食休憩。1時間。その間にあれこれ急いで用をこなす。7時から再開。2枚飛車で羽生の勝利は目前だ。まだ58手目。

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このときホームページ・ビルダーでつけている電子日記に「羽生完勝体制。でもここから渡辺には何度もひっくり返されているからまだ安心は出来ない」と書いた。書きはしたが、いくらなんでもこのまま押しきるだろうと思っていた。不安が現実となる。



77手目。3九飛車成で楽勝だ。
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インターネット解説も△3九飛成▲同角△同竜▲6二と△同金に▲7四桂なら△5九角▲7九玉△7八歩で▲6九玉は△7七角成と銀が取れる。「これは後手が勝ちですね」と控室。また△6二同金に▲5九銀は△7八銀成~△5九竜で「これも後手勝ちそうです」と控室で検討している木村八段と阿部四段。


そうなのだ。もうこの形になれば、解説通り羽生の勝利は確定していた。そうなるものと信じていた。
ところが羽生はここで4九龍とやった。これで形勢がおかしくなった。ただ一手で大きく動いた。大内九段は「逆転したんじゃないか」とまで言った。90手ほどで片がつくと思っていた急戦将棋はここから泥仕合。泥仕合になると渡辺は果てしなく強い。147手までもつれて渡辺が勝った。
羽生がストレート負けで19年間守ってきた王座を失った。偉大な記録が途絶えた。渡辺が羽生からタイトルを奪ったのは初。初めての2冠となる。

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2003年に渡辺の挑戦を退けた第5局が、有名な「羽生の指震え」だ。2対2からの決勝の一局、防衛の一手を見つけた羽生が着手するとき、激しく指が震え、指せないほどだったという。遥か上の世代、同世代と闘い勝ち続けてきた羽生にとって、一回り以上も年下の挑戦者は特別な存在だったのだろう。その後はずっと楽勝の防衛だった。そして今回登場した渡辺に将棋史に残る偉大な連覇記録を止められた。今後この記録の更新はまずあり得ないだろう。まさに天敵である。
渡辺は、羽生の書いた戦術書を愛読して育った将棋少年だった。時の流れ。



羽生の全盛時、奨励会で話題になっている中学生がいた。将来羽生を負かすとしたらあのこだろうという周囲の噂を聞いた中原十六世名人が、「そうか、羽生君もあのこに負けちゃうのか」と言って笑った(呵々大笑ではなく微笑んだ感じ)という話があった。小学校4年生で全国小学生名人になった渡辺(4年生の優勝は初)は入門のころから話題だったし、加藤、谷川、羽生に続いて4人目の中学生棋士になり、いかにも大物然としていた。しかし私は竜王戦以外での実績がない彼よりも、衰えることなく全棋戦で活躍する羽生を支持していた。竜王戦で二度渡辺に敗れているがいつも羽生応援だった。とにかく渡辺は竜王戦以外での実績があまりにすくなかった。羽生を倒す若手の刺客として認めるには成績が偏っていた。

今回のストレート王座奪取で渡辺が羽生の力を越えたと認めざるを得ない。



といって私はアンチ渡辺でもない。このひとの将棋はおもしろい。以前見た山崎とのNHK杯戦など、終盤の捻り合いがすさまじく、息を呑むような激しい展開に、そのとき競馬場に行かねばならず、録画もしていたからあとで観ればいいのだが、テレビから離れられなくなってしまったことがあった。
世代として私は中原名人に憧れた世代だし、時代激変という意味では谷川名人誕生の方が遙かに鮮烈だった。そのときひょんなことから月刊プレイボーイにその記事を書いたっけ。あの雑誌ももうないのか。

それでもいまショックを受けているのは、チャイルドブランドと呼ばれ将棋界を席捲した十代の羽生世代を20年以上も観てきたからだろう。羽生は何度も敗れているが、それは同世代の森内や佐藤との対戦であり、すこし年下の深浦や三浦に敗れたことはあったがすぐに取りかえしている。

世代交代的な意味あいはあまりない。二十代で強いのは渡辺だけだ。羽生世代は二十代の時に全タイトルを独占して、森内、佐藤、丸山、藤井と、同世代で奪取防衛が続いていた。いまも羽生、森内がいて、すこし年下の久保がいて、二十代は渡辺ひとりだけだ。先日まで廣瀬ががんばっていたが羽生が王位を奪還したように羽生を超えるところまでは行っていない。

20局以上羽生と闘って勝ち越しているのは、引退棋士を含めても、渡辺ただひとりだ。いわば羽生キラーである。これで羽生から見て14勝18敗。羽生も渡辺に対してはおかしい。優勢な将棋を何度もひっくり返されている。渡辺の底力だが、贔屓目には羽生がひとりで転ぶような形が多い。確実に苦手意識があるのだろう。今日の敗戦も羽生が転んだものだ。



午後9時に寝て午前3時に起きる生活をしている。昨夜は王座戦を観ていたから終局が午後11時近く、眠くて眠くてそのままダウンしたが、よほど羽生が負けたことが悔しかったのか夢にまで見た。5時に起きたが、なんとも不愉快な目覚めになった。我ながらおどろいた。そんなに悔しかったのか(笑)。

イチローの偉大な記録が途絶える。それはまあ初夏の頃に、今年はもう無理なんだろうなあと、すこしずつ認めていたから、残念ではあるけれど、しかたないかとも思う。ICHIRO51というすばらしいサイトが「現在のヒット数と最終的なヒット数予測」を毎日出してくれるのだが、それがずっと今年は180本程度のままだったので諦めざるを得ない気持ちになれた。今年は無理なんだと哀しい気持ちで確認していた。

武豊のJRAでの連続G1勝利記録も風前の灯火となっている。デビュー2年目のスーパークリークの菊花賞勝ちから続いてきた記録だ。一応スマートファルコンで統一G1を勝っているが、あれと中央のG1は価値が違う。秋天、JC、有馬……勝てそうな騎乗馬もいないようだし、いよいよ途切れてしまうか。スマートファルコンでJCDを勝てば一応記録は続くが……。



イチロー、武豊という天才アスリートの成績が落ち目だ。それは肉体的なものなのだろう。
将棋も、興味のないひとには意外かも知れないが、「最強は25歳」ともう結論?が出ている。将棋も挌闘技なのだ。むかしは精神的にも充実する三十代半ばが最強と言われていたが、今はもう社会人としての常識とかそんなものは関係なく、アスリートとして体力気力充実する25歳が最強というのが定説だ。羽生が七冠を達成したのもこの年齢だし、体力的にこの年齢でないと無理と言われている。脳味噌はもう二十歳過ぎから退化して行くわけだし。
羽生がいま衰えてくる四十代、渡辺が最強の二十代半ばにいる。



ここのところの対渡辺戦の流れから、5番勝負で2連敗したからもうダメだろうなと諦める気持ちはあった。それでも今日の将棋は確勝と思っていたからショックは大きい。ひとつは返して欲しかった。

気になるのは、もう何年も前から囁かれている、そしてかなり確実な現実らしい羽生夫妻の不仲だ。週刊誌ネタにもなっている。さいわい男女ネタではない。でもだからこそよけいにひどいように感じる。元芸能人の妻は娘を連れて家を出ていて、豪邸にひとりで住む羽生が近所に回覧板を届けたとか、ギスギスした話が書かれていた。
こんなことを一ファンが今更言ってもしょうがないが私はあの結婚を好ましいとは思わなかった。あんな派出好きの芸能人ではなく、周囲はもっとしっかりした娘を世話してやれと思った。将棋界の宝なのだ。でも世間知らずの羽生が雑誌で対談したきれいな娘を好きになってしまったのだからしかたない。内助の功どころか内から足もとを引っぱられる現状だ。
そういう状況を加味すれば、別居状態という苦しい状況の中でよくぞここまでがんばっているとすら言える。この解釈のほうが正解だろう。今の羽生はその精神的苦痛で八割の力しか発揮できていない。名人失冠も王座失冠もそれが原因だ。

一方、渡辺の方は年上の賢夫人として有名だ。竜王戦で羽生に3連敗と追いこまれたとき、渡辺を励ます夫人のブログが話題になった。といってわざとらしいそれではない。ほんの1.2行だけの短いブログ。それも假名でひっそりとやっていた。マニアがそれを発見し話題になった。その1.2行の味わいが絶妙だったのだ。そこから渡辺は4連勝で逆転防衛した。7番勝負で3連敗から4連勝は史上初の快挙だった。それは羽生から見ると、これまた史上初の3連勝から4連敗をくったことでもある。渡辺は二十歳のときにできちゃった結婚をした。そのひとり息子も将棋に興味を持ち、将来プロ棋士の可能性を示唆している。渡辺のやっているgooブログがアクセス数で話題になるように公私共に絶好調である。
今回の結果はそれを無視しては語れまい。



これから将棋界は秋から冬にかけての大一番、竜王戦の季節を迎える。春の名人戦、秋の竜王戦が二大タイトルだ。渡辺に挑むのは丸山元名人。このふたり、不仲である。丸山の将棋に対する姿勢を渡辺が評価していないのだ。そんなふたりの対決。それもまたたのしみだ。さてどうなることか。
  1. 2011/09/28(水) 07:12:31|
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羽生、快勝!──NHK杯戦準決勝

 楽しみにしていた羽生と渡辺の準決勝戦。

 羽生が一気に攻めきって勝った。とはいえ切れそうな攻めなので冷や冷やする。だからこそおもしろかった。一緒に手を読んだが今日はよく当たった。解説の郷田より当たっていた(笑)。

 ここのところ羽生は渡辺に負けている。切れるのではないかと冷や冷やしたのにはそれがあった。

 その郷田が「羽生さんの名局」と言った。



 渡辺は羽生に15勝12敗と勝ち越している。20戦以上対局している棋士では唯一だろう。二度の竜王戦の結果が大きい。今年羽生は41勝13敗だが13敗の内5敗が渡辺だ。昨年までは勝ち越していた。一気に今年逆転された。今日羽生が勝ったので羽生から見た成績は13勝15敗になった。早く並び再び逆転して欲しい。

 早く終了したので感想戦がたっぷりあっておもしろかった。

 おどろいたのは竜王七連覇の貫録からか渡辺が羽生と対当であったこと。誰もが羽生と比べると落ちるし委縮するものだが、渡辺にはそれがない。まさに地位は人を作るで堂々としたものだ。



 渡辺はすばらしい棋士だ。奨励会にいたころから注目していた。あのころからもう羽生を破るとしたら渡辺と言われていた。将棋の内容もいい。それでもふたりが対戦するといつしか羽生を応援している。それは羽生がデビュウしたときからの25年という月日を共にした重みなのだろうが、それ以上に彼の凄味にある。

 本来私は挑戦者好きだ。どのジャンルでもチャンピオンに肩入れすることは珍しい。なのに偉大なチャンピオンである羽生にずっと肩入れしているのは、彼が常に挑戦者気質の王者だからだ。

 例えば大山は、王者気質の王者だった。振り飛車という固定した戦法を使用し、勝つためには心理戦まで展開した。挑戦者好きの私は、誰かが新戦法を開発し彼の牙城を崩すのを楽しみに観戦した。中原が初めての名人戦で大山のおはこである振り飛車を採用して名人位を奪取したときは快哉を叫んだ。プロレスで言うなら「掟破りの逆サソリ」でのタイトル奪取だ。



 羽生の場合はもっと凄い。なんでも出来る万能型だが、そこから自分に対して掟を破るのだ。つまり、難しいとされている局面に羽生新手を出して勝つ。みな驚く。それが新定跡になる。ふつうは誰かがその羽生新手を破る新手を開発するまで自分の編みだしたそれを使うだろう。それがふつうだ。誰もがそうしてきた。××新手というそれを編みだした自分とその名に誇りを持っていた。

 羽生はちがう。今度は自分が破った旧来の戦法を使用し、それを破った羽生新手を破りに行くのである。羽生新手を破る羽生新新手を創作に行くのだ。こんな凄い棋士、見たことがない。だから私は今までずっと王者であるのに挑戦者気質である羽生を応援してきた。



 決勝は来週の丸山と糸谷の勝者と再来週になる。今年度は丸山には2戦2敗。新鋭の糸谷には1戦1敗。昨年は糸谷が決勝の相手だった。羽生ファンとして丸山ごときに2戦2敗は不満だ。糸谷もまだまだ羽生の相手ではない。どちらが出て来てもおもしろい。木っ端微塵にして欲しい。今年優勝すると現在最多タイの大山との8回を抜いて単独首位の9回になる。

 いい将棋を見られた日曜はしあわせだ。
  1. 2011/03/06(日) 12:28:39|
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佐藤康光、A級から陥落──一期で復帰しろ!

将棋:名人戦順位戦A級 名人経験者の佐藤九段が降級 三浦八段が単独首位

 羽生善治名人(39)への挑戦者を決める第68期名人戦A級順位戦(毎日新聞社、朝日新聞社主催)8回戦の5局が3日、東京・将棋会館と大阪・関西将棋会館で行われた。三浦弘行八段(35)が谷川浩司九段(47)を破り、6勝2敗で単独首位に立った。

 一方、名人獲得2期の佐藤康光九段(40)は藤井猛九段(39)に敗れて1勝7敗となり、B級1組へ降級することが決まった。名人経験者のA級からの降級は、塚田正夫名誉十段、加藤一二三九段、米長邦雄永世棋聖、中原誠十六世名人に次いで史上5人目。

 佐藤は名人・A級に連続14期在籍。タイトル獲得は計12期で、永世棋聖の資格を持つ。だが、今期は実力を発揮できず、接戦の末に負けるケースが多かった。(毎日新聞)


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佐藤は強い。必ずまた復活するので私は気落ちはしていない。ただ「名人経験者A級陥落史上五人目」なのだが、塚田、加藤、米長、中原が、完全に棋士としての最盛期を過ぎての陥落なのに対し、佐藤はまだまだ若く指し盛りであり、名人戦リーグ以外では強いから、これはかなりの「珍記録」になる。そういう意味では「史上初」になる。



 塚田さんは木村から名人を取り、取りかえされ、完全に燃えつきての陥落、そして引退だった。加藤の陥落は六十半ばである。大山のように生涯A級はならなかったが、「神武以来の天才」として見事な陥落(って言いかたもへんだが)だった。米長、中原も同じ。天才が五十を過ぎ、燃えつきての陥落だった。陥落して間もなくフリークラスになり、数年後には引退している。名人経験者のA級陥落とはそういうものだ。ものだった。佐藤がへんな記録を作った。

 昨年も危なかった。心配してホームページに書いた。佐藤は名人リーグと相性が悪いのだ。対して抜群にいいのが森内。ふたりのこのリーグ戦における勝率はとんでもなくちがう。



 ところで名人経験陥落者四人に対して、塚田だけ「さんづけ」してしまった。こういうのが「世代」なのだろう。私が本気で将棋を始めたのは中原時代。大山、中原、米長、内藤、有吉、大内らが活躍していた時代だ。彼らは将棋ファンの私にとって現役プレイヤーだったから今も呼びすてになる。そのとき塚田さんはまだ『将棋世界』や『近代将棋』に随筆を書かれたり詰め将棋を発表したりして元気だったが、立場はもう「元名人」の将棋連盟会長であり、印象は好々爺だった。どろどろしていなかった。だから自然に「さんづけ」になってしまった。こういう世代感覚はおもしろいと思う。
 読みかえしていたら、「世代」とは無関係の木村名人を木村と呼びすてにしていることに気づいた。これは矛盾になるが、木村の場合は将棋の象徴であり、力道山や大山倍達に「さん」をつけないのと同じ感覚になる。

 そういえば若いプロレスファンが馬場のことだけ「馬場さん」と呼ぶのが流行ったことがある。あれも現役バリバリの馬場ではなく、前座でお笑いプロレスを展開する「社長レスラー」から好きになったファンなら、自然に「さんづけ」なのであろう。もちろんこれも馬場の二十代を知っている私は呼びすてだった。



 佐藤の二大缺陥は、名人リーグの成績が悪いことと、ほとんどすべての棋士に勝ち越しているのに羽生との対戦成績が悪いことだ。なのに名人にもなり、これだけの成績を上げているのだから見事としかいいようがない。歴史に残るA級棋士である。

 タイトル獲得数歴代6位は、大山、羽生、中原、谷川、米長についでか。これらの名を挙げるだけでいかに佐藤が一流棋士かが解る。



 私が佐藤にインタビュウしたとき、彼はまだ五段だった。そのときタイトル戦線に飛びだしていたのは羽生だけであり、佐藤も森内もまだ世に出ていなかったが、誰もがもうそれを確信していた。

 と書くと私が将棋記者みたいだけどそんなことはない。友人に頼まれてたまたまやった仕事。将棋の仕事は三回しかやっていない。私が直接インタビュウしたことのある超一流棋士は彼だけなのである(笑)。でも応援しているのはそんな身贔屓からではない。「中原世代」の私と彼らは世代は違うけど、いわゆる「島研」「羽生世代」のあの連中は将棋界を変えた怪物達であり、惚れないのがおかしい。

 佐藤は劣化していない。いまも棋王戦の挑戦者だ。必ず復活する。だがまだ四十歳の元名人のA級陥落は、やはり歴史的「珍記録」ではある。



「名人経験者」は、あと谷川、森内、丸山がいる。現名人の羽生もまた「名人経験者A級陥落」の資格?をもっていることになる。谷川、森内、羽生は永世名人だ。丸山はタイトルは名人しかない。まさか佐藤が丸山より先に陥落を経験するとは思わなかった。

 失礼ながら毎年心配しているのは羽生や佐藤より上の世代であり四十七歳の谷川だ。もしも陥落したら、潔いあの性格から引退してしまうのではないかと案じている。さいわい今年は挑戦者になるぐらい成績がよい。もういちど羽生谷川の名人戦が見たい。挑戦者になってくれ。これまた失礼ながら三浦じゃ盛りあがらない。

 佐藤よ、一期で復帰しろ!

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【追記】──一期でA級に復帰しました。さすが。ものがちがう。
  1. 2010/02/04(木) 14:39:40|
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雨の日のNHK杯戦──石田和雄奮闘す!

Shogi.gif  きょうのNHK杯戦に石田和雄九段が出ていた。独特のユーモア口調で解説も人気のあった元A級八段である。テレビ出演はひさしぶりだ。予選を三連勝で本戦出場とか。


 地味な矢倉戦であり、仕事の資料整理をしつつ片手間に見ていたが、石田さんの奮闘に、いつしか釘付けになっていた。

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  1. 2008/06/22(日) 13:37:07|
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羽生、名人戦挑戦者に!

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 3月3日は「将棋界の一番長い日」。A級順位戦最終日だ。
 羽生が勝って名人戦挑戦者になる。森内から奪って十九世永世名人にならねばならない。森内に先を越されただけでも屈辱だ。
 秋には竜王挑戦者となって奪取し、初代永世竜王になる。でないと渡辺がこのまま初代永世竜王になる。


 佐藤が結果的には3勝をあげて陥落を防いだ。6連敗から、行方、久保、木村と3連勝だった。これにも一安心。しかし6連敗はひどかった。
 陥落は行方と久保。行方は当然としても久保は大活躍しただけに不本意だろう。なあにすぐ戻ってこられる。
 5連勝で一時は挑戦者争いのトップに立っていた木村は終盤4連敗。この辺にまだ一流ではあるが超一流になれない木村の弱さがある。


 格として名人戦を超えた竜王戦だが、この時期の風景を見るとまだまだ歴史的に価値のあるのが名人戦であることを思い知る。


 すべて予想通りの結果。うれしい。でも前回書いたように最も緊張しておもしろかったのは2月1日の8局目だった。私も実況スレにしがみついて一喜一憂した。それと比べると今回は薄味。佐藤の残留にしても前回で75%になったのだからさほどの心配ではなかった。


 4月になったら名人戦の季節だ。

  1. 2008/03/04(火) 23:29:58|
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A級順位戦の明暗

Shogi.gif 朝の十時に始まって最初に終ったものでも午後十時。たいへんな勝負だ。


羽生が勝って挑戦者に前進。7勝1敗。並んでいた三浦が2敗となったからかなり有望だ。


谷川が三浦に勝って3勝目。順位から残留確定。


佐藤が久保に勝って2勝目。これが最終局。終ったのは零時を過ぎていた。

陥落は行方が確定。もうひとりが佐藤か久保。
最終戦の3月3日は、この佐藤二冠の陥落か残留かが最大の話題になる。


木村に勝てば三浦が勝って同じ3勝でも順位の差で残留。
木村に負けても三浦も負ければ順位の差で残留。
陥落は、木村に負け、三浦が勝った場合のみ。
これでかなり有利になったか。
と、こんなことで話題になっては困るのだが。

  1. 2008/02/02(土) 05:43:27|
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今日は天王山──A級順位戦

Shogi.gif
 今日のA級順位戦は見逃せない。谷川、佐藤が陥落かどうかがほぼ読める。


名人挑戦者も、羽生、郷田、三浦、木村から、かなり絞られるだろう。私はむろん羽生であることを願う。


ネットで有料観戦があるようだが、私はそのすべをもたない。
2ちゃんねるの将棋板で雄志の書き込みに一喜一憂しよう。


最終戦よりも、むしろ今日である。見逃せない。

  1. 2008/02/01(金) 05:27:29|
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右脳左脳──将棋と読書の同時進行実験

 右脳左脳──将棋と読書の同時進行のむずかしさ


PS2での『激指』レーティングが2150点になり四段まで来た。実力相応なのだが長らく実践から離れていたから待ったなしのこのレーティング戦でここまで来るのには苦労した。それはコアな将棋話になってしまうので省く。
 


低レベルの設定だと瞬時に指すコンピュータも、四段戦にもなると真剣に考える。毎回一手一分ほど。
それは相手の手を読むのに程よい時間なのだが、慣れてくるとその間になにかをしたくなる。相手が指してから考えるのはいいのだが、相手の考慮中にこちらも手を読んで待つのがじれったいのである。これが齢をとって短気になるということなのだろう。



一手一分ということは、平均的な一局の指し手数である120手で考えると、相手の指すのが60手、イコール一時間ということである。こちらも同じだけ考えるとすると、一局の将棋に二時間かかることになり、これはもうなかなか本格的なものになる。チェスクロックを使った一時間切れ負けと同じぐらい時間を食う。「切れ負け」はないけれど。



将棋を指しつつ本を読むことにした。短編のミステリィ集。相手の待ち時間に読む。一石二鳥である。
ところがこれがむずかしい。将棋の指し手を考えることと、本を読む(=筋書きを理解する)脳みそは、どうやら使う部位が違うらしい。

以前、米長がモデルになって、棋士が真剣に集中して考えると脳が如何に活溌に動くかを機械で測定したことがあった。運動すると筋肉があたたまるように、脳の血の巡りがみるみる活溌になる様は見事だった。


右脳と左脳に関する智識などもとよりないが、将棋を考える脳と本を読む脳が別部品であることは体で感じる。確実に切り替えねばならないことを体感している。

よってこの両立はかなり難しい。私としてはすいすいと同時進行出来るものと思っていたのだが、実際は、将棋の一手を真剣に考えて指し、本に行くと、その内容に集中するまで一分かかる。せっかく集中できたのだから三分ぐらいは小説世界を楽しむ。その間に一分間考えたコンピュータは手を指し、こちらを待っている。将棋に戻る。今度は将棋の状況を頭の中に入れ、次の一手を考える。この切り替えにもやはり一分ほどかかってしまう。とにかくふたつの世界がまったく違うことを知った。本を読みつつ、同時にゲームの将棋も気楽に楽しむ、どころではない。



これが右脳と左脳をこまめに切り替えて使う脳の鍛錬に効果的なことならいいのだが、もしかしてどっちつかずが右脳と左脳の両方に悪いことだったりしたら目も当てられない。

  1. 2007/12/06(木) 06:26:15|
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将棋界の一番長い日──挑戦者決定戦


将棋界の一番長い日
 A級順位戦の残り全局が一斉に行われる「将棋界の一番長い日」は3月3日だった。今年は初めてBSで丸々一日その様子を見ることが出来た。(厳密には一日三度放送の飛び飛びだったけれど。まあ無料なのだから仕方ない。)


 今年はそこに羽生と谷川が8勝1敗の同率となり、3月16日に名人戦挑戦者決定戦を行うというファンにとってはたまらないプレゼントまでついてきた。


 3月16日。有料のケーブルテレビ将棋チャンネルでは生放送があるらしく、2ちゃんねるの将棋板は朝から盛り上がっていた。視聴している人が経過を書き込み、見られない人が質問したり、形勢を分析したりしてする。あっという間に1000のスレが消化されてゆく。


 この時点で、翌17日の朝9時から30分、NHK-BS2で特番があると知る。私の場合はこれで結果を知ることになるだろう。これだけでもありがたいことだ。


 今はだいたい夜9時に寝て朝3時起きの生活をしている。ちょいとくるうと朝5時に寝る生活になっていたりもするから一定ではない。でもここしばらくこんな形だ。
 寝る前に2ちゃんねるを覗くと、形勢はもつれにもつれていた。
 午前10時に始まり、決着がついたのは翌日の午前1時10分である。まことに格闘技であり、基本は頭脳戦でも体力勝負の世界だ。もちろんそれは翌日に知ったことになる。私はいつものよう午後9時に寝て、3時から仕事をしつつ9時からの放送を待ちわびた。


 佐藤康光棋聖解説、山田久美聞き手の30分番組は、羽生対谷川が歴史的名勝負を繰り広げたため、すばらしい充実の30分となった。思わずベッドの上で正座して居住まいを正し、見惚れるほどの名局だった。


 谷川勝ち。
 ここ4年ほど羽生と森内で闘っていた名人戦の舞台に5年ぶりに十七世名人の資格を持つ谷川が登場する。2ちゃんねる将棋板の、谷川ファンの驚喜ぶりが微笑ましかった。(中には敗者の羽生を口汚く罵る眉を顰めるものもあったが。)


 中学生で四段になり、活躍のたびに常に史上最年少という言葉がつきまとっていた谷川も、いつしか43歳になり、A級では唯一の四十代、つまり最長老となっている。時の流れを感じる。


 さて今年の春、どんな名人戦になるだろう。
 昨年の竜王戦が期待した木村が4連敗で興趣を削いだだけに、名勝負を期待したい。谷川の復帰があったら劇的だ。楽しみである。

  1. 2006/03/18(土) 06:40:09|
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将棋界の一番長い日

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今日は将棋の「A級順位戦最終局」が残局一斉に行われる日です。棋士の悲喜こもごもが入り乱れ、毎年「将棋界で一番長い日」と呼ばれています。
午前10時から始まる対局は、夕方に終わるもの、深夜までもつれ込むものまで様々です。


東西の将棋会館では有料の解説が行われます。会費は3千円とか。全席もう売り切れです。インターネットでも有料解説があります。
東京、大阪以外に名古屋でも行われると知り、会場の名を聞いてうなりました。大須演芸場です。志ん朝が長年独演会を行っていた場所ですね。一度行ってみたいと憧れている場所です。


かつて私は、この日を特集した将棋雑誌を翌月買うのを楽しみにしていました。この日の結果を知るためにだけ毎日新聞を買ったりしました。今もそれは変わりませんが、やがてネット時代になり、昇級降級の結果をその日のうちに知ることが出来るようになります。
もちろん千駄ケ谷の将棋会館に有料の解説を聞きに行ったこともあります。第一回将棋の日が行われた昭和50年11月17日の武道館にも行っています。


ネットよりも先にBS-NHKがこの日の中継をするようになっていたのですが、テレビ嫌いの私はBSケーブルの繋ぎかたすら知らず、その恩恵にあずかることが出来ませんでした。


昨秋、友人の後藤さんが来宅して結線してくれ、BS、CSにPPV時代の今、おそろしく時代遅れなことを言いますが、私はやっとNHKの無料BS放送を見られるようになりました。
とはいえ今にいたるまで、深夜に何本か映画を見ただけで、さほどの感激はしていません。いや、忘れていました、最大の願いであった「午後1時から大相撲を見る」を昨秋、実現していました。大相撲も蔵前、両国に何度も通っています。あれも昼頃から一杯機嫌で見るのが楽しいものです。


今日、大相撲に続くBS放送の醍醐味を味わうことが出来ます。
「将棋界の一番長い日」と題され、NHK衛星第二で、まず昼の0時15分から1時まであり、次が夕方5時から6時です。ここで決着のつく局もあるかもしれません。今回はまだ名人挑戦者が羽生になるか谷川になるか決まっていません。同星です。今日の最終局で決まります。勝った方がなります。両者ともに勝ったら決勝戦です。


 しかもこの午後一時から五時までのあいだが国会中継というのですから、今日の私は一日中テレビにかじりついていることになります。


 最後の中継は午後10時から午前1時半まで。夜半までもつれた局の行き詰まる終盤が見られることでしょう。ここですべてがわかります。


 現在午前5時。今から昼まではしっかり仕事をしましょう。そのあと昼風呂に入って将棋と国会中継。
 午後お時から10時までまた仕事をして、そのあとは晩酌をやりつつ見ることになります。
 将棋ファンにとっては一年で一番重要な日をこんな形で迎えられるとは思いませんでした。といっても、日本中で多くの将棋ファンがもう何年も前から楽しんできたスタイルですが。
 遅ればせながら今年から私も参加させてもらいます。
 いやあ楽しみです。平日にテレビ三昧できる自由業のささやかなよろこびを感じる瞬間です。

  1. 2006/03/03(金) 05:25:17|
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2001年に始めたサイトMone's World--http://monetimes.web.fc2.com/の出張版ブログ【木屑鈔】Boku-setsu-shouです。
2005年からやっているライブドアブログから引っ越してきました。FC2のサイトは2007年から利用させてもらっていました。これでやっとサイトもブログもFC2で統一です。
メールは、moneslife2000@kpe.biglobe.ne.jpまで。

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