スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

相撲話──大鵬の思い出④──かたくなな天才否定の事情──ウクライナの血脈

●大鵬の思い出④──頑なな天才否定──ウクライナの血脈

taihou2「大鵬にはロシア人の血が入っている」という噂は、当時からうっすらと流れていた。色白の躰もそうだが、なによりも顔である。
 当時美人女優として売れっ子だった鰐淵晴子(父は日本人、母がオーストリア人)のような日本人離れした彫りの深い顔はどうしてもハーフに見える。

 異国人との結婚によって生まれた子は、最初は「合いの子」と言った。それが差別用語として「混血」という堅苦しい言いかたになる。やがてそれも差別用語とされ、英語の半分の意味である「ハーフ」に言い替えられる。事の本質を意味不明にしてごまかす日本語の差別語転移の代表例である。(さらには今は、「ハーフだと半分という意味で失礼」とかで、ダブルと言うのだとか。アホクサ。)
 
 どんな顔であれ北海道の父親が「わしの息子ですじゃ」と言えば問題ないのだが父はいない。貧しい母子家庭育ち。樺太からの引揚げ者である。父親のことは写真一枚出まわらない。生死さえ公表されない。その噂が流れて当然だった。

 戦争終結後に突如攻めこんできて北方領土を奪い、満洲では残虐な殺戮と強姦を繰返したロシア人は日本の敵だった。国民的英雄である横綱にロシアの血が入っているとは誰も考えたくなかった。よってそれは長いあいだタブーだった。
 
 なにしろ力道山が朝鮮人だということすら伏せられていて、死後になってやっと流れでたような時代だ。それでも信じない人は多かった。かくいうこどもだった私も、それはプロレス嫌いがプロレスを貶めるために流しているウソだと思っていた。力道山の死後、それまではプロレス好きだった連中が一気にアンチになった。力道山時代はプロレスの結果を報道していた毎日新聞なんぞは、一転してプロレス八百長説の先頭を直走った。戦前戦中は戦争讃歌だったアカヒシンブンが戦後は一転して護憲サヨクになったように、マスコミなんて今も昔もそんなものである。

※ 
 
 私が大鵬にロシアの血が流れているというのを容認できるようになったのは、大学生になってからである。そのころになるともうそれは否定できない話になっていた。それでも「クオーター」と言われていた。四分の一ロシアの血が入っていると。この「クオーター説」の時代は長い。
 
 大鵬の父がウクライナ系のロシア人であり、大鵬はハーフだと公になったのはごく近年である。(調べたら、2001年だから、〝近年〟ではないか。でも大鵬の現役時代から長年秘せられてきた時間と比すれば、充分に近年とも言えよう。)


 大鵬は天才だった。しかし彼ほどそう言われるのを嫌ったひとはいない。不世出の大横綱に誰もがその切口で迫ろうとする。彼は拒む。むきになって拒む。自分は天才ではない。努力型なのだと。誰にも負けないほどの稽古をして、そうしてあの結果を残したのだと。いったい今までにどれほどの回数、雑誌の対談やらテレビやらで、大鵬のこの「天才否定」に接したことだろう。

 一面においてそれは真実であろう。当時の激しい二所一門の連合稽古で、大鵬がいかに稽古熱心だったかは誰もが認めている。そして稽古場でも、いかに強かったかも。
 でも大鵬がどんなに否定しようと、私は彼は大天才だったと思っている。稽古であれだけの成績が残せるなら、それこそ伝説的な猛稽古で有名だった富士桜はもっと出世していなければならない。なにしろ、各部屋の親方が、将来を嘱望する力士は、必ず連れていって見せたと言われる「富士桜の猛稽古」である。ふつうは「ふらふらになったら稽古終了」だが、富士桜の稽古は、「ふらふらになってから、始まる」と言われた。すさまじいスタミナだった。
 稽古好きはいくらでもいた。努力型もいくらでもいた。大鵬があれだけの大横綱になったのは、天分があったからである。神に与えられた天分に恵まれていたのだから、紛う事なき天才であろう。 


 ではなぜ大鵬は、そこまでして天才と呼ばれることを拒んだのだろうか。
 私はそれを「血の否定」と考える。
 大鵬の父は、樺太に住むウクライナ系ロシア人だった。
 ウクライナ系ロシア人と聞けば、挌闘技ファンなら誰でも〝皇帝〟エミリヤエンコ・ヒョードルを思いうかべるだろう。前田日明がリングスに連れてきて日本デビュー、その後『PRIDE』に移籍し(ひき抜かれ)、後に世界最強と呼ばれた男である。アレクサンダー・カレリンの名を出すまでもなく、ロシア人の頑健さは誰もが知っている。まこと、我らが先祖は小男でありながら奴らと白兵戦をやって勝ってきたのだ。偉大である。

 大鵬の強さに「ロシア人の血」があったことは否めない。もしも大鵬の言うように「猛稽古」で強くなったのだとしても、それに耐える頑健な躰は、父からもらったものだったろう。
 大鵬はもちろん母から聞いて、自分の父がロシア人であることを知っていた。時代を考えれば、それは大鵬にとって、口に出せない、心にのし掛る重い枷だったろう。日本人はロシア人が嫌いである。中でも北海道ではロスケと言って嫌っていた。それでなくても北海道の百姓とはちがう顔をしているのだから、自分の父がロスケである事実は、大鵬にとって重かったはずである。

 頑ななまでの天才否定は、それによるものだったのではないか。
「天才」を容認することは、「ロシア人からもらった頑健な躰」を認めることになってしまう。彼は自身の内なるロシアを否定し、「努力して強くなった日本人」でいるために、執拗にそれを訴えたのではないか。私はそう解釈している。

 もっとも彼に限らず、天才は天才と言われることを嫌う。自分は精一杯努力したのだ、簡単に天才などと言わないでくれ、と言う。「おれは天才だ」という天才はたいしたことはない。 しかしまた天才は、心の中で<おれは神に選ばれた天才だ>と自負している。

※ 

 大鵬部屋の力士に露鵬というのがいた。大鵬が鵬の字を与えている。これはもうひどい悪相だった(笑)。犯罪者面である。後に大麻で角界追放となる。その弟に北の湖部屋の白露山なんてハゲたのもいた。こちらはキユーピーみたいだった。彼らを見ても大鵬とロシアを結びつける感覚は芽ばえなかった。

wakanohou 露鵬で出来たロシアとの縁から、大鵬が間垣部屋に紹介して入門させた若ノ鵬というのがいた。これも後に大麻で角界追放となる。

 彼を見たときはびっくりした。若い頃の大鵬とそっくりだったからだ。純粋なロシア人である。左の写真。

「ああ、大鵬の二枚目ぶりってのは、ロシア的ハンサムだったんだな」としみじみ思ったものだ。私はそのころすでにロシアに行ったことがあったが、べつに大鵬的な美男子を見た憶えがなかった。やはり髷を結ってないとイメージが繋がらない。そういう意味で若ノ鵬は忘れられない力士である。これまたロシア人特有の恵まれた体力で抜群に早い出世をした大器だったが、精神面がついてゆかず挫折した。

 そう考えると、私の母と姉の大鵬嫌いも、外人嫌いに通じて、それなり筋は通っていたのかと思う。田舎女として、大鵬の容姿に、本能的に異質のものを感じていたのだろう。(続く)

---------------

【追記】──大鵬と王貞治

 同い年の同時期のスーパースターであり、気が合ったのか、夜明けまで痛飲した仲だったという。訃報を特集するスポーツ紙でも王さんのコメントは筆頭扱いだった。

 王さんは、父台湾、母日本の混血である。父ロシア、母日本の大鵬と同じ組み合わせだ。ちがうのは、王さんの場合、その姓から、出自が明確にされていたのに対し、大鵬は伏せられていたことだ。
 大鵬はきっと、王さんには自分の血脈を語っていたのではないか。そんな気がする。
関連記事
  1. 2013/02/04(月) 06:00:18|
  2. 大相撲
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<相撲話──大鵬の思い出⑤──大鵬の故郷・弟子屈に行ったころ──琴櫻の思い出話 | ホーム | 相撲話──大鵬の思い出③──すっぱい葡萄の家系──女嫌いのルーツ>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://moneslife.blog.fc2.com/tb.php/940-fa527e80
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

fc2moneslife

Author:fc2moneslife
2001年に始めたサイトMone's World--http://monetimes.
web.fc2.com/の出張版ブログ【木屑鈔】Boku-setsu-shouです。
2005年からやっていたライブドアブログから引っ越してきました。
FC2のサイトは2007年から利用させてもらっていました。これでやっとサイトもブログもFC2で統一です。
メールは、moneslife2000
@kpe.biglobe.ne.jpまで。

最新記事

カテゴリ

未分類 (0)
大相撲 (32)
落語 (6)
生活 (85)
パソコン (78)
ことば (41)
読書 (29)
音楽 (50)
政治 (200)
テレビ (27)
インターネット (91)
漢字 (6)
オリンピック (11)
マスコミ (46)
NHK (2)
プロレス (6)
世相 (91)
総理大臣 (7)
映画 (21)
スポーツ (8)
園芸 (3)
将棋 (71)
Jazz (7)
競馬 (20)
芸能 (32)
旅行 (10)
格闘技 (4)
漫画 (14)
橋下徹 (16)
タバコ (4)
Rock (2)
中共 (11)
宗教 (9)
週刊誌 (7)
皇室 (9)
地震 (39)
台湾 (5)
石原慎太郎 (10)
CM (2)
きっこ (23)
地デジ (7)
朝鮮 (23)
国民栄誉賞 (2)
ツイッター (8)
女子サッカー (1)
野田聖子 (9)
訃報 (10)
ブログ (11)
飲食 (11)
電王戦 (2)
竹島 (9)
靖國神社 (6)
デヴィ夫人 (6)
酒 (4)
節電 (1)
ホッピー (5)
小沢一郎 (9)
Windows8 (2)
たかじん (5)
島耕作 (1)
物品 (3)
テレサ・テン (2)
選挙 (8)
佐川急便 (8)
猫 (1)
白川道 (1)
サヨク (14)
麻雀 (1)
郵便 (1)
通販 (1)
Asus Memopad (1)
文章 (2)
携帯電話 (1)

月別アーカイブ

カテゴリ別記事一覧

検索フォーム

リンク

このブログをリンクに追加する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。