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3年遅れの「麻生太郎漢字誤読論」③──「触れない腫れ物」では破綻する──「傷」を晒して居直るのが最善



 私は自分のサイトで十数年「ことば」について書いている。自分なりに気になる日本語をテーマにしたものだ。 高島俊男先生の『お言葉ですが…』について書く《『お言葉ですが…』論考》も同趣旨のコーナーになる。このブログでも「ことば」をテーマにして書いたものが50篇ほどある。とは、いま調べて知った。いつしかそんなに溜まっていた。サイトの支店として始めたここも2005年からだからもう7年になる。それぐらいは溜まるか。
 日本語の使いかたについてがテーマだから、政治家の発言を取りあげることもある。

 いまこの10年分を見てみた。

・中曽根大勲位の「ひさかたの」(2003/01/21)
 中曽根さんが「ひさかたの」で始まる短歌を詠んだ。しかしその「ひさかたの」は「ひさしぶりに」という意味に使われていて、「天」や「雨」等ににかかる枕詞の使いかたを間違えていた。たぶん「久方振り」との混用なのだろう。(これは新聞も取りあげた。)

・菅直人の「役不足」
 民主党の代表選に出馬するのかと問われた菅直人が、「私では役不足ですが」と述べた。「役不足」の誤用である。2007/07/29

・安倍首相の「慙愧に堪えない」(2007/05/28)
 松岡農水省の自殺に、当時の安倍総理が「慚愧に堪えない」と言った。「残念」という意味で使ったのだろうが、「慚愧」は「恥ずかしい」という意味であり、これでは「自殺するようなのを登用して恥ずかしい」になってしまう。誤用である。(これも新聞が取りあげて話題になった。)

・「田中眞紀子と麻生太郎」というのがあるので、どんなものだったかと読んでみたら、2007年の安倍政権時、当時の麻生外務大臣が「そんなこと、アルツハイマーでもわかる」と差別発言をして問題になったことに対し、眞紀子が「自分がアルツハイマーだから、そんなことを言うんでしょ」と言ったというしょうもない話だった(笑)。

・「ジュンプウマンポ」という項目があるので、今回のテーマでもあるから(笑)読んでみる。書いたのは2004年の4月2日。かの有名な松本清張原作、野村芳太郎監督の映画「砂の器」の中に、役者が「じゅんぷうまんぽ」と言うシーンがあるのだそうだ。映画は見ているが覚えていない。そういうセリフの読み間違いに、何故誰も気づかなかったのだろうという映画評論家の文章の話だった。



 麻生太郎教信者のJNSC会員は、「むかしはジュンプウマンポと教えていた」と書いていたが、それはたぶんちがう。正解は「むかしから、そういう誤読をするひとが多かった」であろう。私も、そう口にするひとを何人か知っている。

 検索したら、あるひとが「私はこどものころ読みのテストでジュンプウマンポと書いて丸をもらった。だから強烈に覚えている。あれの読みはジュンプウマンポだと今も思っている。だがいくら辞書を調べても載っていない。どういうことだろう」と相談していた。誰も応えていないようだから私が答える。それは「先生がじゅんぷうまんぽと誤読で覚えていたから」である。

 とまあ、目につくコトバがあるとメモのようにあれこれ書いているのだが、あれほど話題になり、しかも数が多かった麻生さんの誤読に、私は本店のサイトでも支店のこのブログでも、ひとことも触れていない。



 理由は、「あまりにかなしかったから」である。

 政治家は若い頃から聴衆を酔わせる効果的な演説を考える。言葉が勝負だ。言葉づかいは上手であり、語彙も豊富だ。わるい言いかたをするなら、「言葉で平民をだまくらかす詐欺師」である。やたら支那の故事を引用したがる。田舎者にはそういう難しい言いまわしが効くらしい。田中眞紀子ですら「隗より始めよ」なんて使っていた(笑)。
 この頃は英語が流行っている。日本語で言えば簡単なところを敢えてあちらの言葉を使う。これまた無学なものには、意味不明の外来語は効くらしい。マニフェストとかアジェンダなんてのもそれになる。麻生さんも得意の英語はよく使った。田中康夫も得意だ。

 私はサイトで自分の無学の恥を晒している。「極寒」を「きょっかん」だと思っていたり、「十手」が「じゅってと打っても変換されない、なぜだ!」と怒ったりしている。正解は「じって」。
 自分自身がそういうレベルなので、私が取りあげる政治家の発言は、「言葉のプロである政治家が、こんな間違いをしていた」のような場合が主だった。



 それらと比すと、麻生さんのは中学生レベルの漢字誤読だった。指摘し、テーマにするには、あまりにレベルが低かった。

 私は漢字が苦手だ。あまり好きではない。苦手なものは努力して克服するようにしてきたが、漢字に関しては投げている。DSで漢検の準一級、一級あたりをやっていると、読めない書けないコトバが頻出する。そのとき「こういう文字が読めるようになりたい」というよりも、「こんなもの、読めなくていい」と感じてしまう。渡来の漢字に和語を当てはめる不自然さが、そのクラスになると判じ物のようになっていて、ああいうものを得意とするひとを、尊敬ではなく軽蔑したくなる。
 そういう私から見ても、麻生さんの誤読はひどすぎた。ぜんぶ私ですら正しく知っている字、熟語だった。

 この文のタイトルは「触れない腫れ物では破綻する」だが、麻生さんはこの「破綻」も「はじょう」と誤読した。これほど漢字の読めない総理大臣は憲政史上初だ。ひどいを通りこしていて、文章にしてそれを笑う気にさえならなかった。だから書かなかった。

 麻生さんの初歩的な誤読がいかに話題になったかは、2010年の正月に届いた年賀状に添えられた一筆で、複数の友人が「日本は今みぞゆうの危機にありますが頑張りましょう」と書いてきたことでも解る。必ず「みぞゆう」のあとには「(笑)」とあった。日本中のお茶の間で、酒席で、どれほど多くのひとが笑い話にしたことだろう。
 念のために書いておけば、私の友人であるから思想はみな保守系である。そういうひとたちですら書くほど大きな話題だったことになる。

 だがそれは自国の総理大臣なのだ。私は、ただの一度も麻生さんの誤読を笑い話にしたことはない。なんとも物悲しくて、その気になれなかった。
 自分の支持している総理大臣のそういう姿は見たくなかった。笑い話には出来ない。

 長らく政権与党の座にあり続けた自民党が腐敗し、長年続く不景気の中、あらたな期待を託された民主党に政権を奪われるのは時代の必然だった。止められない流れだった。同時に、堕ちた自民党のイメージに、「常識的な漢字も読めない総理大臣」があったのも事実である。いかな麻生支持者であれ、それはすなおに認めねばならない。



 期待大の民主党政権になったが、ほんの半年も経てば誰もが気づく。ありゃ口先だけだと。
 一年ほど経ち、民主党がどうしようもないカスだと決定的になると、政治を扱うテレビ番組に、「元首相」の麻生さんが、ぽつぽつと出るようになった。
 すべて見ているが、このとき異様なことに気づいた。「誰も誤読には触れない」のである。
 MCがいて、辛口の政治評論家なんてのもいて、麻生さんのやった経済政策を誉めたり、批判したり、自由な意見が飛びかうのだが、不自然に、どの番組でも、「漢字のことは絶対に出なかった」のである。
 麻生政権末期に、どれほどそれを流したことか。国会での誤読する映像を流し、誤読例をスーパーで出し、これでもかというぐらい笑い物にしたのに、まるでそんな事実は一切なかったかのように触れないのである。

 これも前項の私を「失せろ、外道!」と言った盲目的に自民党を崇拝するJNSC会員なら、「誰もが麻生さんの価値に気づき、あれが誤読ではないことを理解したからだ」となるのだろうが、そんなことがあるはずもない。それはこのJNSC会員の脳内お花畑だけの出来事だ。真実は、「触れないことを前提にしての出演」だったのだろう。



 粗の見えてきた与党民主党を論ずるのに、前政権の元首相は、野党代表として価値が大きい。出演オファーが行く。しかしマスコミにはあれほどひどい目に遭ったから、麻生サイドは慎重になる。断る。
 そういう中、つきあいのあるプロデューサーやらタレントやらとの関係から、出演を受ける番組も出て来る。
 そのとき麻生サイドは、「絶対にあの漢字誤読には触れないこと」を条件に出演したのだろう。それこそ一筆取ったと思われる。

「TVタックル」に出演したときも、そういうツッコミが大好きなたけしも大竹も、かつてはさんざんやっていたのに、まるで「そんなことはなかった」かのように、一切触れなかった。完璧に触れないことが不自然だった。
 この出演は麻生さんと酒席を共にしたたけしが直接出演を口説いて叶ったという。そのとき条件として麻生さんはそれを出したのだろう。たけしも諒承したのだ。

 それでも大竹がそのことにつっこんだら私も彼を認めるのだが、番組の約束を護って大竹は漢字のかの字も口にしなかった。そこに彼の「サヨクタレント路線」という演技が見える。その程度の男だ。どうせなら「漢字誤読の話はしない」という約束ごとを破って、激怒した麻生さんが退席するぐらいの事件を起こしてみろ。

 政策として麻生さんの路線は正しかったと今も思う。だがそれを見直す場でも、誤読の話が出たらすべてぶち壊しになる。それほど破壊力のある醜態だった。なにしろ総理大臣が中学生レベルの漢字を読めないのだから。それが連続したのだから。
 それに触れないというのは出演の絶対条件だったろう。

 つまりそれは、それだけ麻生さんにとっても傷ついた、未だ傷の癒えていない、今も触れられたくない事件だったことになる。すべてに恵まれた最高級の人生を歩んできた麻生さんは、自分がまともに漢字を読めないバカだと初めて知った。漢字が読めないことでいちばん傷ついたのは、自分を漢字の読めないひとだと認識していなかった麻生さん自身なのだ。



 テレビがその約束を護り、鄭重に扱ってくれたのは、なかなかテレビに出てくれない「野党の大物の元総理」だったからだ。だから腫れ物に触るよう特別な扱いをしてくれた。だから成立した。

 これからは政権与党の経済方面を担う重鎮である。国会の質疑において、野党がそこまで気を遣ってくれるだろうか。野党時代の民主党のあのいやらしさを思い出せば、またネチネチと無意味な攻撃を始めるのは目に見えている。

 その対策として、前記JNSC会員のような、「むかしはじゅんぷうまんぽと教えていた時代があった。麻生さんは誤読していない」とか、「麻生さんは他人の作った原稿を読むのが苦手で」「英語で考えて、それを一旦日本語に変換してから口に出すので」などという幼稚な身贔屓擁護は役に立たない。



 戦略として、「あまり勉強してこなかったので漢字の読みは苦手です。でも今論じているのは経済の問題ですから、私が漢字を読めないことは関係ないでしょう。経済の政策なら自信がありますよ」と居直るのが最善だろう。
 実際漢字の誤読を取りあげるのは、本題とは関係ない揚足取りにすぎない。それへの対応は、「隠す」のではなく、露出して居直ることだ。童話「北風と太陽」の太陽になる方針だ。
「漢字が読めない」という傷を、隠す「北風路線」ではなく、大っぴらにしてしまえばいいのである。たいして醜い疵痕じゃない。すぐに厭きて誰も見なくなる。つっつかなくなる。それが最良の方法だ。

 第二次安倍政権の国会でのやりとりはどうなるだろう。このことを突っこまれたとき、麻生さんがどう居直るか、期待してみつめたい。今度は大丈夫だろう。
 そう思った矢先の、祝勝会における「じゅんぷうまんぽ」だった。この調子ではまた同じミスを確実にする。どう対処するのか。世の中は、麻生さんのあらゆることをすべて好意的に受けいれてくれる前記JNSC会員のようなひとばかりではない。



 一応これで終る。続篇を書く機会がないことを祈る。

---------------

【追記】──イヤな予感が当たりませんように!──1/2

 私のブログ文章は後々からアクセスが増えることが多い。「予測が当たった」ような場合である。古い文章が脚光を浴びて異様なアクセスになったりする。
 なんだかイヤな予感がする。大事な閣僚答弁の場で、またも麻生さんが「やっちまう」ような気がするのだ。

 麻生さんの大失態のあと、それを怖れた民主党政権時代、官僚が作った原稿には中学生なら読める漢字にもみなフリカナがついていた。一度、菅直人の原稿が映ったことがあった。フリカナだらけだった。いかに麻生さんの失態が政治家にとって恐怖だったかになる。

 自民党政権になってもそれは踏襲されるだろう。特に麻生さんの読む原稿はフリカナだらけになると思われる。その点では安心だ。麻生さんがヒラカナを読み間違えない限り。
 でもこのひとは、またなにかやらかしそうな気がする。答弁において。

 つまり「未曽有」を「みぞゆう」と誤読したようなのは、今後は避けられる。フリカナがあるからだ。
 だが「じゅんぷうまんぽ」のように、「誤って覚えている日本語」を、このひとはいっぱい持っている。ただ原稿を読んでいるだけならいいが、安倍首相の「慚愧」のように、「自分のことばの誤用誤読」をしそうなのだ。



 安倍政権を倒すことを社是としているアサヒシンブンのようなのは、閣僚の失態を狙っている。なんとかして安倍政権を倒そうと鵜の目鷹の目で探っている、待ち構えている。
 安倍内閣のメンバーの内、麻生さんが、またも「やっちまったなあ」になりそうなイヤな予感がする。

 というのは、先日の為政会での発言を聞いて、麻生さんがこの3年間、その辺のことを反省して勉強してきたとは思えなかったからだ。私に対して麻生信者のJNSC会員が「このバカは3年間なにをしてきたのだ」と書いていたが、それはすんなり麻生さんに当て嵌まる。また同じ轍を踏み、アサヒあたりに揶揄されるのではないか。心配である。
 そうなると、古い記事であるこのブログ文章に異様なアクセスが殺到する。 そうならならないことを願う。3年前とは一味ちがう麻生さんを見せて欲しい。
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  1. 2012/12/31(月) 22:05:37|
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