天才テレサ・テンの凄味──「釜山港へ帰れ」聞き比べ

ずっとSmooth Jazzばかり聞いていたので、ひさしぶりに日本語の歌を聴きたくなった。
それで「釜山港へ帰れ」聞きくらべをやってみた。 以前YouTubeでDownloadして溜めたものである。連続再生にする。



まずはチェウニ。うまいなあ。でもライヴ映像は田舎の体育館みたいで、手拍子打ったり宴会みたいだけど(笑)。

次いで桂銀淑。このひとのハスキーヴォイスはたまらない。これはCDからの音楽に景色をかぶせた映像。

朝鮮人歌手のパターンはみな、歌詞が1番日本語、2番朝鮮語、3番でまた日本語に戻って終り、というもの。
もともと朝鮮の歌だから朝鮮語もいいけど、あまりまぜこぜは好まない。

3番目で日本人青江三奈登場。って実はこのひとも朝鮮人。
うまいなあ。若い頃、青江三奈の魅力がわからなかったことが悔しい。Jazzがわかるようになってから、一回りして、このひとの凄さを知った。朝鮮民族の歌の上手さに感激する。

4番目にキム・ヨンジャ。これまた最高。ライヴでこの実力は感嘆する。背筋がぞくぞくする。
キム・ヨンジャは整形で目を二重にしている。一重まぶたを気にする朝鮮人がよくやることだが、目許の涼しい一重の朝鮮美人が好きな私からするとわからない感覚だ。しかしこれぐらい歌がうまかったら人生も楽しいだろうなあ。

5番目に本家のチョー・ヨンピル。渋谷公会堂のライヴ。これはあのベースを表に出すアレンジ。アレンジはこれがいちばんいい。



歌がうまいかへたかは演歌でばれる。私はカラオケをやると巧いと誉められるが、それは誉める彼らが下手すぎるのであって、自分の歌がどの程度のものかは本人がよく知っている。だからリズミックな歌でごまかしているだけだ。シンコペイトしている曲をリズムにのって歌えばそれなりに様になり、歌のへたさはごまかせる。レディガガをへたなおばさんが歌っても、リズム感がよければなんとか聴ける。リズム感がわるいのに、やたらこういうのを歌いたがる困ったのもいるが(笑)。
しかしリズムが単調なスローテンポの演歌ではこのごまかしが利かない。 よって私は演歌が歌えない。といって歌いたい演歌もそうはないが。

が、また、演歌が抜群にうまいからリズミックな曲もこなせるというものでもない。北島三郎あたりの曲を本物と同じぐらい巧く歌えるが、テンポの早い曲になるとついてゆけないひともいる。まあ全部こなせたらプロだけど。
そういう演歌だけ抜群に巧いひともいっぱい見てきた。こういうタイプのひと──たとえば牧場関係者──とそういう機会があると困る。好みが違いすぎるから、互いに歌うたびにちぐはぐになってしまうからだ。で、こちらは聞き役に回るようにする。



telesaとりはテレサ・テン。台湾代表。これまたライヴ。キム・ヨンジャとチョー・ヨンピルに感動し、これ以上のものはあり得ないというところを、さらに高く、軽々と越えて行く。なんだ、この凄さは。すごいなあ、天才は。涙が出てきた。

と書くと、今回初めてこの「聞き比べ」をやったみたいだけど、そうじゃなくて、2年に1回ぐらい同じ事をやっている。そして毎回同じ結論で同じ感動を味わっている(笑)。

みな凄いのだ。聞くたびにそう思い、これ以上のものはないと感じる。だけどテレサは、そのたびにそれ以上のものを感じさせる。なんなのだろう、このひとの深さは。



テレサ・テンの話をすると、すぐに「どの曲がいちばん好き?」となり、「時の流れに」「つぐない」「空港」だとか言いあい、「別れの予感」なんかを言って盛りあがったりする。

そんなとき私は「You Light Up My Life」だと言って白けさせることになる。みなそんなものは知らない。ひねくれ者のスカした意見のように思われる。でも本音であり、私は荒木とよひさ作詩のあの世界を好きではない。あの種の男にとって都合のいい「わるいのはわたし、あなたは変らずそのままでいて。ずっと遠くから想っています」的な演歌世界は嫌いだ(笑)。

デビューしたときから歌のうまさと声に惹かれた。でもその歌詞の内容が嫌いだった。
アジアを廻るようになり、各国で売っている台湾語や英語のテレサのテープを買って聴くようになって、とんでもない天才を自分は勝手に遠ざけていたと気づいた。荒木とよひさの世界でテレサを解釈していた自分を愧じた。でも日本ではそんな歌しか唄ってないのだから、それはそれでしょうがないのだけど。
だから私の愛聴するテレサの歌は、前記のような日本のテレサ好きのひととは異なっている。アジアで買い集めた台湾語や英語のものが主だ。



私の中でテレサ・テンはワールドワイドな歌手であり、あんなちっぽけな演歌世界で語るひとではない。
「You light up my life」は、デビー・ブーンのヒット曲だ。Whitney HoustonやLeann Rimesなんかもカバーしている。アメリカの最高級歌姫であり、その歌唱力は折り紙付きだ。だがそれらと比してもテレサは負けない。いや凌いでいる。とんでもない天才なのだ。

旅行作家の下川祐治さんは、テレサを「台湾の美空ひばり」と呼ぶ日本のマスコミを、「テレサに失礼だ。テレサ・テンがいかにアジア全土で聞かれていることか。美空ひばりこそ『日本のテレサ・テン』と呼ばれるべきだろう」と書いた。全面的に賛成する。
時代がちがうから比較にはならない。敗戦後の時期に美空ひばりがどれほどの価値があったのか知らない。でも私の中では歌手として比ぶべくもない。私の知っている美空ひばりは「真っ赤な太陽」あたりからだが、テレサの深みはあんなものじゃない。

2年後ぐらいにまた同じ事をやって同じ事を書いている気がする(笑)。
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  1. 2012/12/14(金) 20:08:03|
  2. テレサ・テン
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