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秋晴れの一日──Terrible Good Day!



いい天気だなあ。秋の澄んだ空。涼しい風。陽射しは暑いほど。年に何度か、思わず感嘆してしまう日が数日あるが、今日はそんな秋の日だ。
先程洗濯をしていたら、あまりの好天に溜め息が出た。こんな気持ちのいい日に洗濯をしていると、高島俊男先生が大好きなものとして「洗濯」をあげていたことがよくわかる。なんか、しみじみと充実感がある(笑)。


oistrakhダビッド・オイストラフのヴァイオリンを聞きつつ気持ちよく仕事をしている。Prokofievはいいなあ。ここのところ仕事がたのしくてしょうがない。すいすい捗る。それもやはり気候による充実感なのだろう。夜は読書がたのしい。
しかしここまで天気がいいとさすがの引き篭もりも外に出たくなる。



東京オリンピック開幕が10月10日であり、後の体育の日になった。いまは毎年日がかわるので実感がない。
むかしの運動会は今ごろが中心だった。今日みたいないい天気に接すると、やはり運動会はこの時期がいちばん、と思う。
むかしの稲刈りも今ごろだった。運動会も稲刈りもいまはずいぶんと早くなった。



Scotlandの田舎で、こんな秋晴れに出会ったことがある。
魔法使いみたいな顔をしたしわくちゃばあさんに、いい天気ですねと挨拶したら、顔をくしゃくしゃにして「Oh Terrible Good Day!」と言った。テリブルは「ジェイソン・ザ・テリブル」しか知らなかったので、こんな使いかたもあるのかと学んだ。日本語で言うと「気味悪いほど美しい」とか、「吐き気がするほど気持ちいい」とか、そんな感じか。あの暗く重い天気の国じゃ、ほんとにもう最高の天気だったろう。



2004年10月26日、茨城の家の庭で、車イスに父を座らせ、病院に向かう日も、こんないい天気だった。
その頃、父は何度か入退院を繰り返していた。腰の痛みから自力歩行がつらくなり、トイレに行けなくなっていた。夜は私が徹夜で面倒を見ていた。父は前立腺から来る頻尿の気があり、一晩に5.6回、用を足した。枕元に私の作ったチャイムのボタンを置いておく。もよおしたらそれを鳴らす。すると私が二階から降りて行き、尿瓶をあてがって処理した。

父はそれを恥じていて、不自由な体で自分でしようとした。しかし精神安定剤という名の睡眠薬を飲んでいるから、意識は半分朦朧としている。手指は思うように動かない。失敗して布団を濡らし、それから私を呼ぶことも多かった。惚けたり、寝た切りになっているならともかく、意識はきわめい明瞭で頭脳も明晰だったから、いくら息子とはいえ、イチモツを指でつままれての尿処理は恥ずかしかったのだろう。いつでも遠慮せず呼んでくれ、おやじと息子の仲じゃないかと何度も言い、やがてすなおに聞くようになった。



父はそのまま家での療養を望んだ。なんの問題もなかった。だが昼の面倒を見ていた母が、躰がもたないと言いだした。母も老齢だったし、小柄だったから、父を支えてトイレに行ったりするのはつらかったろうとは思う。母が「あたしはもういやだ」と言い、また入院することになった。父は不満げだったけれど、私にも24時間は見られない。私も昼夜逆転の生活でふらふらになっていた。

兄夫婦は千葉にいた。兄は東京の会社に通っていた。兄嫁は趣味に生きていた。長男なのに一度も親と同居したことはなかった。こどもふたりはもう独立していた。夫婦だけだ。兄嫁が父母と同居して昼の面倒を見てくれたらすべて解決するのだが、自分の快適さしか考えていない兄嫁が義父の下の世話をするはずがない。兄にそれを命じる甲斐性があるはずもない。

そしてまた父母も、そんな屈辱的な頼み事の出切るひとたちではなかった。ここがへんなところで、田舎のことであるから父母も昔かたぎの長男偏愛主義である。田地田畑ぜんぶただの一度も同居することなく自分達の面倒を見なくても長男に譲り与えた。だったら自分達の面倒を見ろと言えばいいのだが、これまた誇り高くてそんなことは言えない。
いま思えば、昼間、有料の介護士を頼んで世話をしてもらい、私が夜の世話をして、家で死なせてやればよかた。悔いが残る。

PB080028



















2004年の6月、肝硬変が進行していて、「もっても、あと半年」と医者に宣言された。デッドラインは12月。
10月26日の入院が最後になるのは間違いなかった。父がもう生きてこの家にもどってくることはない。私はその覚悟をしていた。肝硬変から来る腰痛を、ただの腰痛と思っている父は、意気軒昂だった。死をまったく意識していなかった。

奇蹟的な、美しい秋の日だった。ちょうど今ごろの時間だ。父が、「いやあ、すばらしいいい日だなあ」と言った。
私はそれに肯きつつ、泣きそうになるのを気づかれないようにした。父がもうこの家に戻ってくることはない。

やはりそれが最後の入院となり、父は医者の診立て通り、12月10日に逝った。
私は父の遺体を自分のクルマに載せて運んできた。



美しい秋の日にはいくつも思い出があったはずなのに、いま思い出すのは、Scotlandで魔法使いみたいな顔のおばばが言った「Terrible Good Day!」と、車イスの父の背中に手を置いたとき、父の言った「いやあ、すばらしいいい日だなあ」のふたつだけだ。
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