新『お言葉ですが…』始まる!

待望の「新・『お言葉ですが…』」の連載が「Web草思」で始まった。第一回は2月7日、第二回が2月15日である。月に二度ほどまた高島さんの『お言葉ですが…』がネットで読めることになった。実現してくださった関係者各位に深く感謝する次第である。なんてえりっぱなことを言える立場ではないが、とにかくもううれしくてありがたい。草思社にはもう足を向けて寝られない。高島先生のご健康とご健筆を心から祈願する。

新『お言葉ですが…』
草思社URL
http://web.soshisha.com/archives/word/2007_0215.php

ここ二回は「雑話二則」と題されている。インターネットで始まった新『お言葉ですが…』のためのウォーミングアップというところか。
  2月15日の第二回目では皇后陛下の歌を取り上げていた。

かの時に我がとらざりし分去れの
           片への道はいづこ行きけむ

高島さんのことばを借りるまでもなく、民間から嫁いだ皇后陛下という立場を鑑みると、なんとも大胆な歌である。高島さんは感想として、《あんなに美しかった人が、泣きそうな顔の、猫背の??これは身長の点でも天皇につきしたがう形をつくれ、と役人に要求されてのことだろう??老女になった。その悔いが、おそらく半世紀にわたって心身を苦しめてきたのであろうことがうかがわれる。》と書いている。(詳しくは新『お言葉ですが…』をお読みください。)

 皇后陛下の強さは自らの老いを隠さないことにある。真っ正面にそれを出す。輝くように美しかった分だけその変容に胸が痛む。その辺が各国の整形手術をしてまで若さを保とうとする大統領夫人、国王夫人との決定的な違いだ。
 私は皇后陛下のその強さを賛美するものだが、視点を変ると、皇后陛下はあれほどお美しかったかたが、あの世界でご苦労なさることにより、こんなにもなってしまったと厳しい現実を敢えて晒しているとも言える。日清製粉のお嬢様が皇室ではなく民間に嫁いでいたなら、今ももっと若々しく輝いていられたろう。それこそまだ五十前に見える若々しさを保っていたと想像するのは難くない。そう考えるなら、むしろ整形手術をしてまで若さを保ってくれた方が皇室関係者はありがたいとも言える。皇后陛下のご容貌の変化こそが、かの世界がいかに民間出身のプリンセスをいじめ抜いたかの証である。とするならそれは皇后陛下の緩やかで残酷な皇室世界への復讐とも言えよう。

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高島さんは皇后陛下の歌が心に残った理由として我が身のことを語り始める。
 私はこのめったにない私的なことを語る高島さんの文が好きである。
 と書くと、高島さんは体のあちこちが痛いとか教え子と麻雀をしたとか私的なことばかり書いているではないかと指摘する人がいるかもしれない。って、そんな見当違いなことを指摘する人がここを読んでいるはずもないのだけれど、それはまあ文章の展開上こんなふうになる(笑)。
 私の言う「私的なこと」とは、高島さんのもっと内側の世界である。

『お言葉ですが…』全作品中、私にとって最も印象的な一篇として、「字が下手だと言うヤツにろくなのはいない」がある。文字通り「私は字が下手でして」と言うようなヤツはダメだ、とお怒りになっている。それこそ救いようがないほどキツく否定している。若い頃から一貫して怒ってきたらしい。私は字が下手なことに劣等感を持っている典型的な男だったので、この文を読んで恥じた。いわゆる「思わず俯いてしまいました」である。だがそのあとの高島さんがそう思うようになる理由を読んで、なんともくすぐったいようなものを感じた。

《高島さんのお父さんは字が上手なことが自慢でいつもそれを口にしていた。母親をいつもおまえは字が下手だと貶していた。いつもそう言われているものだから、母親はわたしは字が下手で、と字を書かないようになってしまった。お父さんはそれに対して、お母さんが書くべき手紙やハガキに関しても、よおし字の上手なおれが書いてやろうと益々居丈高になった。母親はわたしは字が下手だからといつも悩んでいた。息子(高島さん)がそんなことは気にするなといくら言っても治らなかった。字の上手下手など人間の価値に関係はない。字がうまいと自慢するヤツはくだらない。下手だと卑下するヤツは間違っている!》というような内容だった。これってトラウマであろう。
 長男でありお母さん子だった高島さんは、このことから字がうまいとか下手だとか自慢したり嘆いたりする人を嫌うようになって行く。特に字が下手だと卑下する人を嫌うようだ。

 わずか50のレスにも満たず消えた2ちゃんねるの『お言葉ですが…』スレにあった、「あの人はマザコンなのを隠さないよね」を読んだときは目から鱗だった。私が感じた「くすぐったいようなもの」の正体はそれだったのだ。私はトラウマとまでは思ってもマザコンまで思い至らなかった。それは私が母親を嫌いでマザコンの対極にいるからだろう。

 私の持っている高島さんの本には載ってないので未確認情報だが(とはいえ信用度は高い。単なる流言蜚語ではない)、高島さんが大学から去ったこと(=学者の道を断念した理由)理由として、岡山大学時代、母親の看病で休暇を取ることが多く、それを許してくれない大学側と決裂したからだ、との文を読んだ。
 長男であり唯一の男の子であり、そしてもちろん学業優秀であり、妹が出来てからはいつも「にいちゃん」と呼ばれて育った高島さんが、大のお母さん子であったことは著書のあちこちから伝わってくる。本が大好きで、でも読みたい本を全部買うことなど出来なかった時代、お母さんが本好きの息子のために近所の本屋さんに掛け合って格安でレンタルしてもらえるようにしてくれる話等に顕著だ。母親として敬愛するのはもちろん、高島さんは今の自分を作ってくれた恩人としてお母さんに深く感謝していたのだろう。そのお母さんの世話を心ゆくまで看たい。でもそれを許してくれない職場。ケツをまくった気持ちがよくわかる。私の場合は、母ではなく父であり、もともとフリーランスだったので満足行く介護が出来たが。

 文章の性格上この種の話は『お言葉ですが…』にはほとんど出てこない。それ以前の大和書房の本には何度か出てくる。そういう意味で、高島さんの私的な部分も読んでみたい読者としては『お言葉ですが…』は物足りない面も持っていた。メジャな週刊誌であるから読者からの反応反発も多い。次第に自重されていったのだろう。
 そこから解放され、Web草思で書く高島さんは、『お言葉ですが…』以前のように肩の力を抜いているように思える。

 今回も皇后陛下の歌を引きながら、ご自分のことを語っている。
「もしもあの分岐点で、違う道に行ったらどういう人生になったろう」と皇后陛下は歌った。
 独身の高島さんは、自分もあのとき違う道を選んだなら、今頃家族と家庭が……と、人生の岐路を語る。それは「相生ライフ」に書かれた「私の人生は失敗だった」を読んで以来の衝撃だった。この「相生ライフ」の文章もインターネットがなければ生涯触れることのない文章だった。まさかあれが単行本再録なんてことはあるはずもない。ネット世界の便利さを思う出来事である。

「Web草思」で、今までめったに読めなかった高島さんの私的な文が読めるなら、あのノナカ機関誌と堕落した『週刊文春』の連載が終ったのもわるくはない。高島先生のご健勝と、草思社と連合出版の発展を心から願う。(07/2/26)

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関連
『お言葉ですが…』論考
「人生の結論」
「字の上手下手」





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