モノの価値の変化


 ビデオテープのDVD化が進み、寝室に六個ある白のカラーボックスのあちこちにだいぶすきまが出来てきた。こりゃもうだいじょうぶだなと目測して黒のカラーボックスふたつのビデオテープを白に移すことにした。土曜の早朝。すこしきつくなったが読みもしない本20冊ほどを天井近くの収納家具の隙間に詰めたら無事黒のそれをふたつ空にすることができた。



 隣室に運び出す。寝室から黒のカラーボックスふたつが消えた。たったそれだけでずいぶんと部屋がスッキリし明るくなった。消えたといっても今の時点では隣のキッチンに移しただけでこれをバラし有料の粗大ゴミとして処理するまで先は長い。空になったカラーボックスを運び込まれたキッチンは狭くなり興ざめである。ともあれ本来田舎で燃やしてくるはずなのにこちらの収納家具不足で予定変更して持ってきた黒のカラーボックスふたつが無事使命を終えることが出来た。


 光の入らない暗い部屋なので極力明るくしようと努めている。持ち主があつらえた収納家具は木目調だ。補助のカラーボックスは白である。これは前住人の持ち物を流用している。濃いアイヴォリィに黄ばんだ四方の壁は本来は白だとわかったので(笑)白ペンキを塗ることにした。実験的にすこしやってみたら驚くほどきれいになる。



 そうして懸命に明度を上げてすこしでも明るい部屋にしようとしている中で黒のカラーボックスふたつはあきらかに流れに反していた。なんでこんなものがあるのだと忌まわしいぐらいである。しかしこれは田舎で自分が選んで買ったものだ。田舎の部屋では調和がとれていた。それだけ三方が窓の田舎の部屋は明るく、モノ入れのこれは黒でちょうどいいぐらいだった。白のモノ入れを置くなんて考えたこともなかった。ヨーロッパ受けするためにわざとらしく白をアピールしたたけし映画のように部屋中がハレーションを起こしたようになったろう。部屋の雰囲気でこういう好みも変るものかとおどろく。私がここに引っ越してきて今から家具を買うとしたらすべてを白で揃える。


 しかし、ところが、である。前住人はこの部屋を黒で統一していたのである。引っ越してきたとき、彼は私に多くの家具を遺していった。それは善意であったのだが私にはいらないものばかりだった。寝室は黒の家具ばかりだった。家具と言うほどのものではなく彼が日曜大工で作ったモノをみな黒に塗っていたのである。黒で統一、といえば聞こえがいいが、光の入らない部屋をさらに黒で統一するこの感覚はどう考えても屈折した心理であったろう。それは彼の置かれた立場に触れることになるからことばは押さえる。


 引っ越してきて最初に私がやったことは、読書やテレビを見ていちばん多くの時間を過ごすことになるであろう居間兼寝室から、彼がペンキ(墨のように思える)を塗りたくって作った真っ黒な木製の家具類をバラしてベランダに運び出し、使われていない白のカラーボックスを運び入れることだった。真っ黒な家具類は今もベランダに積み上げられたままである。粗大ゴミとして処分するには数万円かかるだろう。未だ手を着けていない。これを片づけてベランダを広くすれば入る光も増えるはずだから早急にせねばならない。有料粗大ゴミは部屋まで取りに来てくれないと知った。一階の置き場まで私が運び出さねばならないようだ。


 ともあれ今の彼は遅めながらも生涯の伴侶を得てここから脱出した。新築マンションだという新居はきっと光に満ちた明るい部屋であろう。心からよかったと思う。この暗い部屋を黒で統一していた彼の屈折を思うと他人事ながら辛くなる。入居した当初、私はここに入れるきっかけを作ってくれたS未亡人に感謝し、ここを汚れ放題にしていたフリーターの息子に批判的だったのだが、いまは後妻をもらって新生活を始めた父に反発していた息子の方に同情的である。


 ちいさなことだが寝室から黒のカラーボックスふたつを追い出せたのは私にとっておおきな一歩だった。しかしまた何事もアニミズム風にとらえる私は黒のカラーボックスの嘆きを思ってしまうのである。
 彼(?)は好まれて買われた。望まれてここまで来たのだ。田舎の部屋では和気藹々だったのである。それが状況によって邪魔者にされてしまう。追い出せたのはおおきな一歩だったなどと言われている。田舎から整理に役立とうとはるばるクルマに積まれて運ばれてきたのではなかったか。助勢を頼まれたそのときの彼は意気揚々としていただろう。私も心強い味方を得たつもりだった。まさか田舎の部屋では似合っていた彼がこんな不似合いな邪魔者になるとは思いもしなかった。無常というと大げさだがそんなことまで思ってしまう。これは物語的に言うなら、田舎時代は最高の美人と思っていた恋人を東京に呼び寄せたら、やってきた彼女は、なんの魅力も感じない色あせた田舎娘でしらけてしまったとか、そんなことに通じるだろう。



 その辺は割り切るしかない。
 部屋がほんのすこしだが、広く明るくなった。うれしい。

関連記事
  1. 2007/01/15(月) 19:29:47|
  2. 生活
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<インターネットトラブル──Yahoo地域障碍 | ホーム | 撤収の準備>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://moneslife.blog.fc2.com/tb.php/63-6dc86409
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

fc2moneslife

Author:fc2moneslife
2001年に始めたサイトMone's World--http://monetimes.
web.fc2.com/の出張版ブログ【木屑鈔】Boku-setsu-shouです。
2005年からやっていたライブドアブログから引っ越してきました。
FC2のサイトは2007年から利用させてもらっていました。これでやっとサイトもブログもFC2で統一です。
メールは、moneslife2000
@kpe.biglobe.ne.jpまで。

最新記事

カテゴリ

未分類 (0)
大相撲 (32)
落語 (6)
生活 (85)
パソコン (78)
ことば (41)
読書 (29)
音楽 (50)
政治 (200)
テレビ (27)
インターネット (91)
漢字 (6)
オリンピック (11)
マスコミ (46)
NHK (2)
プロレス (6)
世相 (91)
総理大臣 (7)
映画 (21)
スポーツ (8)
園芸 (3)
将棋 (71)
Jazz (7)
競馬 (20)
芸能 (32)
旅行 (10)
格闘技 (4)
漫画 (14)
橋下徹 (16)
タバコ (4)
Rock (2)
中共 (11)
宗教 (9)
週刊誌 (7)
皇室 (9)
地震 (39)
台湾 (5)
石原慎太郎 (10)
CM (2)
きっこ (23)
地デジ (7)
朝鮮 (23)
国民栄誉賞 (2)
ツイッター (8)
女子サッカー (1)
野田聖子 (9)
訃報 (10)
ブログ (11)
飲食 (11)
電王戦 (2)
竹島 (9)
靖國神社 (6)
デヴィ夫人 (6)
酒 (4)
節電 (1)
ホッピー (5)
小沢一郎 (9)
Windows8 (2)
たかじん (5)
島耕作 (1)
物品 (3)
テレサ・テン (2)
選挙 (8)
佐川急便 (8)
猫 (1)
白川道 (1)
サヨク (14)
麻雀 (1)
郵便 (1)
通販 (1)
Asus Memopad (1)
文章 (2)
携帯電話 (1)

月別アーカイブ

カテゴリ別記事一覧

検索フォーム

リンク

このブログをリンクに追加する