小林よしのり的迷路──思想家の行きつく先

00siso.gif  長年「ゴーマニズム宣言」を読んできて思うのは、思想家とはみなこういう運命なのかという「さびしさ」だ。
 政治思想的なことに興味のなかった小林よしのりさん(以下敬称略)の勉強と上昇にずっとつきあってきた。私も、作品中に登場する人物の本を読んで勉強したりした。しかし彼は、あまりにひとと対立する。いや対立はいいのだ。敵とは本格的にやって欲しい。バカサヨクをこてんぱんにやっつけてくれるのは快感だった。

 だが、このあいだまでの味方がいきなり敵になってボロクソに貶されるから、読者としてのこちらも切換がたいへんだ。ついこのあいだまで絶讃していたひとが、数ヶ月後には槍玉に挙げられ、手厳しく批判されている。あまりのこのパターンの連続に、次第に私はついてゆけなくなった。



 「朝生」で同席した西部邁が「電車の中でマンガなど読んでいてはいかん」と発言したことに対して「マンガを侮辱された」と怒ったときは、私もマンガ好きなのでその点には共感したのだが、「ゴーマニズム」の中で、西部を思いきり滑稽に描いて笑いものにしているのを見たときは、イヤな気分になった。やりすぎだった。粘着質の復讐に思えた。

 その後、小林の考えは変り、西部と親しくなる。小林の方から「電車の中でマンガなど読んでいてはいかんのです」と言って握手した。西部の本を愛読していた私は、ふたりが親しくなってよかったなと思った。それからの西部は知性的に描かれる。が、しばらくの蜜月状態の後、また方向性がちがい絶縁する。いったいこういう形で、何人のひとと親しくなり、絶縁してきたことだろう。

 「あたらしい教科書を作る会」でも同じ。
 「皇室問題」でも同じ。

 親しくなり、きれいな似顔絵で讃え、やがてケンカして、絶縁し、醜い似顔絵で批判する。



 旧くは、「薬害エイズ問題の川田龍平」だ。
 小林は川田を応援していた。やがて川田や川田の後援者が政治的な活動を始めたので批判側に廻る。
 私はもともと川田の母親が熱心な共産党員でありサヨクだったので川田に興味はなかったが、ただ小林の描く川田が、それまでの「さわやか好青年」から、敵対したら「ニヤっと笑う悪人顔」になったのには、何とも言えない苦いものを感じた。



 共産主義者は意見の異なる仲間を粛清する。それは、ソ連のような国家指導者から連合赤軍の内部分裂まで共通している。

 連合赤軍事件の時、私が最も理解できなかったのは、あの仲間内での殺しあいだった。すくない仲間なのに、考えが合わないからとあんなふうに殺していたらいなくなってしまうだろうに。



 小林にもそれを感じる。保守論壇の連中と親しくなっては次々と対立し絶縁して行く。変らないのはスタッフだけだ。7割、いや9割意見が同じでも、気に入らない1割で対立し、批判し、絶縁して行く。これでは友好的な論客などいなくなってしまうだろう。彼に言わせれば、その1割は9割をも支配している重要な核の部分、となるのだろうが。

 1万から9000を嫌って1000。1000から900を嫌って100。100から90を嫌って10。10から9を嫌って1。
 小林の歩んできた道はそれだ。自分だけの1になるのは自明だった。

 それではやってられないから新顔を集めて10に増やす。でも9を嫌うからまた1。
 また10に増やして……。
 自転車操業状態だ。

 最近はまた1万にもどるために、大票田のAKBなんてのに手を出してみたりしている。



 世の中には、私と同じようにずっと「ゴーマニズム」を読んできて、小林と同じようにいろんなひとを嫌い続け、いまも小林とまったく同じ考えのひとはいるのだろうか。そういうひとは小林と同じように、西部さんを好きになり、櫻井よしこさんを好きになり、いまは批判する立場にいるのだろうか。

 私は、この「親しくなったひととすぐに敵対する」について行けなくて、小林ファンをやめた。いまも『SAPIO』や『WILL』を図書館で読んではいるが、かつての単行本をすべて購入していた時期とはもうちがう。



 現実世界では、7割嫌いのひとともつきあってゆかねばならない。100%一致しなければ絶縁という生きかたは出来ない。でも思想とはそういうものなのかも知れない。日常生活とはちがうのだ。
 いつも一緒の、家族以上のスタッフがいるから、小林にとって他者との絶縁はつらいことではないのかも知れない。

 こちらは、見ているだけで胃が痛くなるけれど……。

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 ある政治的な主張が中心のブログをやっているかたにもそれを感じる。
 民主党、社民党を批判するのは当然としても、同じ形で自民党もボロクソに言う。
 その他の政党も気に入らない部分を批判する。

 このかたのブログを愛読していたが、「ゴーマニズム」に感じたのと同じく、「そんなにあらゆるものを否定していたら自分しかいなくなるのではないか」と案じた。

 そうなるともう自分が政党を結成して政治家になり、総理大臣を目ざすしか道はなくなる。
 実際そういう活動に走り始めたようだ。だけどそれは単なる泡沫候補に過ぎない。
 読むのがつらくなってやめた。

 見ているだけの私より、現実の活動に走った彼の方がえらいのかも知れないが。



 生きることにおいて、多少の妥協はしかたないのではないか。日常生活のみならず政治思想においてもだ。

 私はいま半端ヴェジタリアンだ。自分から屠殺された四つ足動物の肉を食うことはないが、マヨネーズやチーズは食している。牛乳も飲む。街中で食するラーメンやうどんには動物のだしが入っていることもあるだろう。これ以上徹底するつもりもない。

 ヴェジタリアンはヴェジタリアンでいいが、「豆腐で作った味も見た目も本物そっくりのステーキ」なんてのを食するようなのはビョーキだと思う。そんなに食いたいなら牛を食えよと言いたくなる。肉が食いたいのに我慢して菜食してもしょうがないだろう。

 また「きっこの日記」の「きっこさん」のように、ほんの数年前からヴェジタリアンになったひとが、肉を食うひとや畜産業者をボロクソに言うのもピョーキだ。というかこれは人間性の問題だが。



 小林の生きかたを「藝」として、「仕事」として見れば理解できる。でもあれはストレスのたまるつらい「仕事」に思える。絶対的信奉者を得ることは、それ以上の快感があるのかも知れない。私にはわからない世界だ。

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【補記】──Google-IMEに失望


 この文章のように人名が多く登場する文章を書くときはなんといってもGoogle-IMEが便利。ということでATOKから切り替えて使ったのだが「にしべすすむ」が変換できなかった。がっかりした。たぶんAKBのメンバーなら全員正しく変換するだろう。ひとりも知らないので試しようがないが(笑)。

 しかしそのことでGoogle-IMEを批判するのはお門違いか。このIMEはネット上で多用されたコトバを蒐集して自動的に辞書に加えてゆく。「にしべすすむ」が「西部邁」に変換されなかったのは、ネット上でそれを使うひとがいなかったからであり、Googleに罪はない。私ががっかりするとしたら、それはネット使用者が西部邁さんに興味がないということの方になる。

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【補記・2】──川田ズル顔に賛成!

 川田の母親を共産党と書いて、民青だからまちがいないよなと思いつつ、一応ネットで調べた。そこで川田龍平が憲法九条サイトでクソバカ意見を言っているのを読んだ。とんでもねえカスだ。さすがミンコロの息子だ。
 ということで、ズル顔に書いた小林に賛成。「さわやか青年顔」が本質的間違いだ。
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  1. 2011/06/24(金) 10:36:19|
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