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白川道「祈る時はいつもひとり」──またしてもタバコタバコ、ピースが煙い(笑)



鮮やかに甦る激動期の香港。自由と友情と愛を賭けて、男は黒い勢力にひとりで戦いを挑んだ。祈りを込めて―。

バブル崩壊前、今や伝説となった仕手株「風」を動かしていた三人の男たちがいた。ひとりは謎の事故死を遂げ、ひとりは巨額の金とともに姿を消した。残されたひとり―茂木彬は愛する女のために、失踪した親友の捜索に乗り出す。
幻冬舎 上下巻 各1785円。




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 デュアルディスプレイの一台が壊れてシングルディスプレイになった。パソコンがつまらないので本を読んだ。小雨のぱらつく梅雨時の天気だったし。
 図書館で借りたものの、すこしだけ読んで、つまらないので投げだしていた一冊。上下巻だから二冊か。返却日が迫っていた。
 昨年10月発売。1995年に小説雑誌に連載した作品を15年後に加筆修正して出版したもの。香港返還が1997年だった。変換前の香港もすこし出て来る。
 白川さんの作品と言えば1ページに一度は出て来る喫煙シーン。最近の作品でも喫いまくるが、それでも近年は禁煙の場所が多くなったのでいくらかは減っている。作品の中で「禁煙なので吸えなかった」なんて出て来る(笑)。よほど立腹しているようだ。
 その点これは15年前の作品だから、それはもう喫いまくる。今回のこだわり銘柄はピース。やたらめったらありとあらゆる場所でとにかくピースを喫わないとこのひとの話は進まない。重度のニコチン中毒だ、本人も作品も。なんともそれが……。



 ネットの感想文をいくつか読んだ。ブログにアップするぐらいだから当然白川ファンなのだろう。美点のみ取りあげて絶讃している。ファンは痘痕も靨でなんでも受けいれてしまうらしい。すぐに目につく缺点に対する指摘もなかった。白川道さんの小説はずいぶんと雑だ。愉しければそれでいいやといういいかげんな読者の私ですら目についてたまらないのだから辛口の書評家ならもっと辛辣になるだろう。作家が雑だとファンも雑だ。



 そんな中、「いったい何本ピースを吸っているのか数えたくなった(笑)」という感想を見かけ、すこしだけ溜飲を下げた。わかるひとはわかっている。それほどしつこくページ毎と言えるほど「ピースに火を点けた」が出て来る。

 二十代の時、自分もニコチン中毒だったからわかる。薬物中毒だから、ひっきりなしに吸う。吸わずにいられない。まずは朝起きて一服し、さて出かけるかと部屋の中で喫い、道路に出たら歩きながら吸い、電車を待つ駅で吸い、電車が着いたらまたその駅で吸い、と行動の区切りにいつもタバコがあった。

 白川さんはご自身が今もそうであり、嫌煙の流れを嫌い、死んでもタバコはやめない主義らしい。それはそれでいいが、小説の登場人物がぜんぶそのパターンなのは作家として失格だろう。タバコを喫うシーンがないと場面転換も推理も会話も恋愛も何もかも出来なくなっている。作品自体がニコチン中毒だ。

 ピースの香りや、あの群青色の小箱や、鳩の描かれたデザインのことが、何度も何度も出て来る。ハードボイルドタッチの作品の暴力シーンと「平和の象徴の鳩」を絡ませるのがお気に入りのようだが、これでもかというぐらい同じ比喩が出て来るのがなんとも陳腐に思えてしょうがない。まあこういうのも肯定派からみると「たまらない魅力」「しゃれた演出」になるのだろうが。

 それに学生時代に空手をやっていたとはいえ、その後なんの習練もせず、酒と煙草ばかりの自堕落な四十男が、いきなり昔取った杵柄でいまも空手の達人なのには哂ってしまう。体を鍛えるシーンなどまったくない。鍛えていない。失踪した親友を本気で捜しはじめ、襲い来る日本ヤクザ支那ヤクザと闘うのだから、せめて酒と煙草を断って躰を鍛えなおすシーンぐらい入れて欲しい。あまりに雑。ご都合主義。疑問を持たずこんな小説を読める人は問題だ。

 そういえば二日間だけ酒とタバコを断つときがあって、それで主人公は顔つきからして変るのだが、んなアホな、である(笑)。



 それでも自分の関わっていた株の世界を舞台にしているから、なんとも雑な設定で読むに耐えなかった「最も遠い銀河」あたりよりは破綻がすくない作品と言えるか。

 白川道「最も遠い銀河」感想

 とまあ毎度文句を言いつつ読んでいるのだから、私は私なりに白川ファンなのだろう。

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【附記】──一例としての〝雑〟


 せっかくの大作を雰囲気だけで貶しては失礼なので一例を。
 主人公は巻末近くでいよいよ「悪の日本人ボス」と対峙する。70歳代の老人だ。そのとき思うこと。その表現。

《××(日本人ボスの名。伏せておきます)が重い瞼の下から、射るような目で私を見た。
 その目の光は、先日会ったときに見せたものとはまったく別の色を帯びていた。その目の光は、呉や、「日亜時事通信社」のビルの窓で一瞬だけ見た、あの鴻池の目の光を私におもい起こさせた。》


 なかなかいいですね。ついに意外な日本人ボスにたどりつき対峙します。その日本人ボスの鋭い目の光は、主人公がかつてリンチされたことのある香港の支那人ボスの呉というヤツや、一度だけ見たことのある戦後闇社会を牛耳ってきた日本人大物鴻池(モデルは小佐野賢治かな)を思い出させた、というものです。いいシーンです。なおこの「おもい起こさせた」は、正確にそのまま再現しています。「おもい」がカナ、「起こさせた」が漢字交じりです。こだわりなのか単なるミスなのか。その他にカナの「おもう」はないのですが。

 ラスボスとの対決を前にわくわくするシーンです。ご本人ものって書いているのでしょう。
 でもまともな読者ならここで「一瞬だけ見た鴻池の目の光」という表現に疑問を感じます。

 友人の謎の失踪を追う主人公は、いよいよ敵一味と本格的な闘いが始まる前、戦後闇社会の大物であるこの謎の老人を一目見ておこうと「日亜時事通信社」のあるビルを張ります。道路の看板の蔭からビルを見あげていると、じつに偶然に四階の窓が開き、そこから老人が顔を出します。それを見て主人公は、「あの禿頭の老人が鴻池か」と思うわけです。それが主人公が鴻池という大物を見た唯一の瞬間です。

 いま70歳代の日本人ボスと対峙し、自分を射るように見詰める目の前の男に、一瞬だけ見た80歳代闇社会ボスと同じ目の光を見たと書いているわけですが、主人公がその闇社会大物老人を見たのは、雑踏の路地裏から見あげた四階の窓、そこで一瞬だけ見た禿頭なのです。「鴻池の目の光をおもい起こさせた」って、四階の窓から顔を出した老人の顔を一瞬見ただけなのに、なんで「目の光」までわかるんだ、いったいどんな凄い視力なんだって話になります。視力10.0ぐらいないと無理です。

 でもそれ以前にこの禿頭は息抜きに窓を開け、のんびり空を見あげたのですね。背後から部下に声をかけられ、すぐに引っ込んでしまいます。ほんとに一瞬見かけただけです。
 どんな「目の光」も、それは対象によって変るものでしょう。この日本人ボス70歳と、戦後の闇社会で生きてきた80歳が、ともに地獄を見てきた老獪な鋭角的な目をしている、という解釈はわかりますが、それは主人公のような敵を目前にしたときのものでしょう。
「ついにオレのところまでたどりついたか。さすがだ」なんて感じで睨みつけてくる目の前の日本人ボスと、「ふああ、今日もいい天気じゃわい」なんて感じで四階の窓から顔を出したのを一瞬だけ見た老人の「目の光」を結びつけるのは、やっぱり無理があります。どうしてもふたりに共通した「目の光」を使いたいのなら、ホテルのロビーでニアミスするとか近距離での出会いにすべきであり、「路地から見あげた四階の窓」は、いくらなんでも不自然です。

 とまあ白川道さんの小説はこんなふうに〝雑〟なんです。上半身ダンディなのにズボンを履きわすれているような。それが魅力とも言えます。
 毎度思うことですが担当編輯者はなにを考えているのでしょう。こういうことを作家に意見して、よりよいものを作るのが彼らの仕事でしょうに。あきれます。私の「作家と編輯者は二人三脚」というのは古き良き時代への幻想なのでしょうか。

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【附記・2】──「冬の童話」のモデル

 ネットの感想文を読んでいたら、一応白川さんの全作品を読んでいるつもりでしたが、知らない作品タイトルに出逢いました。出たばかりの作品で「冬の童話」というタイトルのようです。筋書は「辣腕編集者が大手出版社を辞めて自分だけのちいさな出版社を作る。すぐに大成功する。そんな遣り手の中年男が若い娘と知りあっての恋愛小説」だとか。
 これを読めば誰でもこの主人公は、白川さんの本を出している幻冬舎の見城徹さんをモデルにしたのだと気づきます。見城さんは角川書店から独立して幻冬舎をつくり、ヒットを連発して一流会社に育て上げました。世話になっている身近な友人をモデルにしたイージーな設定ですが、だからこそ楽屋落ちもあって愉しいかも知れません。乗り掛かった船なので読んでみることにします。全作品読んでいるのにひとつだけ読んでないのもしゃくですから。

 ここのところ白川さんの本をあまり図書館で見かけません。この「祈る時はいつもひとり」も「冬の童話」もWikipediaの白川さんの経歴に書いてありませんでした。Wikipediaの早い項目は、たとえば芸能人が事件を起こしたりすると、その日の内に更新されます。いまだに「最も遠い銀河」から更新されていないのは、Wikipediaの白川さん担当も厭きてきたということでしょうか。

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【附記・3】──香港の描写&年齢差

 憎まれ口ついでにもうひとつ。香港の描写が安易です。いかにも小説のために事実婚の女房(中瀬ゆかり)を連れてロケハンにゆき、そこで見聞した景色や食事を書いているのがみえみえ。映画「慕情」の香港島のこととか観光案内のようです。

 それと、主人公は舞台である1995年に40歳の設定。45年生まれの白川さんはこのとき50歳ですから主人公と10歳年齢差があります。10歳上の白川さんが主人公に自分をかぶせるものだから、この主人公、ちょっと感覚や知識が古いです(笑)。
 上記の映画「慕情」でも、あの有名なテーマ曲「Love Is A Many-Splendored Thing」に思い込みのあるのは白川さんの世代で、主人公の世代にはないでしょう。まして学生時代は空手バカの設定なのだから。この10歳の落差は大きいですね。

 でもまあこれは楽しい笑いでケチをつけているのではありません。私も一応全作品を読んでいるのですから、この文を読んで立腹した白川ファンがいたなら、こいつはこいつなりに白川ファンなのだろうと思って許してやってください。
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  1. 2011/06/15(水) 04:30:38|
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