神戸のロックカフェ.3──リクエスト考

 私にとってのロック喫茶は、渋谷道玄坂の「ブラックホーク」になる。csnyの時代ぐらい? 

 反対の宮益坂にはフォーク喫茶「青い森」があって、泉谷しげる、RCサクセッション、古井戸等が出ていた。陽水も出ていたらしいが私は見ていない。十数年前、初めて清志郎と話したとき、「青い森で見ていましたよ」と言ったら、「それは古いですね」と微笑んでくれた。あのとき赤ちゃんを抱いていた。あのこはいまいくつになったろう。

 クラシック喫茶は「ライオン」。リクエストはあのころからBachやMozartだった。三つ子の魂。いまも好みは変わっていない。

 Jazzはまだぜんぜんわからなかった。周囲にColtraneを絶賛する連中はいたけれど。いや正直に言えば、そいつらがうさんくさいから私のJazz好きは遅れたのだ。Jazzってのは、今はどうか知らないけど、あのころ、中身のない奴の鎧みたいなアイテムだった。

 あらためて自分の青春の街は渋谷なのだと気づく。ヘビースモーカーだった(恥)。



 リクエストってなんだろう。いま、好きなものはみな持っていていつでも聞ける状態にある。家で聴けるものを神戸のロックカフェでリクエストするのはナンセンスか。渇望している幻の珍品を願うべきなのか。なんかあったかなと考える。思い浮かばない。きっとあるんだろうけど……。でも無理矢理思い出してリクエストってのもヘンだ。



 真っ先に思い浮かんだのはSRVの「Little WIng」だった。写真の「The Sky is Crying」に収録されたバージョン。アンプの焦げる匂いまで伝わってくるこの渾身の演奏は大音量で聴かねばならない。音域をカットしたMDや圧縮したmp3ではダメだ。iPodではダメだ。数えきれないほど聴いているが、いま大音量再生装置のない私はそれをしていない。まああったとしても環境的に無理だ。ヘッドフォンになる。よって文句なしの第一候補。



 リクエストの変化には携帯音楽プレーヤーの発達も影響しているように思う。

 私は「究極のウォークマン」についてずっと考えてきた。



 究極のウォークマン



 20年前から10年前ぐらいまでのことを8年前にまとめた文章だけど、もう完全に浦島太郎。いやはやすごいことになっている。8年前に本気で考え、したり顔で書いたことが失笑噴飯物になっている。iPodの変えた音楽環境は大きい。

 北海道取材に毎回愛用の黒革バッグを担いで行った。中身のほとんどはあちらで聞くためのカセットテープ。その20年前がつい昨日のようなのだが、今はiPodひとつでバッグどころかコンテナ一杯の音楽を携帯できる。



「大量の音楽を手軽に携帯できるようになったこと」は、ロックカフェでのリクエストの形まで変えたように思う。

 上記「究極のウォークマン」にくどいほど書いたことだけれど、携帯できる音楽量の変化は私には大事件だった。文字通り「歩きながら音楽が聞ける」ウォークマンの登場は画期的だったが、すぐに慣れた。「それは当たり前の時代」になった。CDウォークマン、MDウォークマンになっても実態はたいして変わっていない。やはりmp3の登場が大きい。これによって「携帯できる音楽量」が桁違いになった。しかも桁はひとつではなくみっつぐらいちがった。



 初期のiPod。容量20GB。4000曲収録可能。こんなちっこいものに4000曲。カセットテープやCDなら400枚。それがこの中に入る。しかも分類され簡単に呼びだせる。ついにここまで来たかと身震いするほどの感動だった。



 神戸のSさんのところに遊びに行くとする。そのロックカフェへ行くことを楽しみにして。

 新幹線で向かう私はラップトップとiPodを所持している。ふたつで10000曲ほど。以前なら旅先に持って行けるのはウォークマンと数本のカセットテープ(CDでもMDでもいいけど)程度だった。せいぜい300曲。この差はとんでもない。

 携帯している10000曲の中に私の聞きたい音楽は全ジャンル詰まっている。デスクトップの32000曲の中から自分の好きなものを10000曲移してもってきた。その中には私のお気に入りが、音楽だけではなく落語や昔懐かしい演歌まで入っている。至れり尽くせりだ。



 ロックカフェでリクエストし、スピーカーから大音量で聞くことと、車窓から景色を眺めつつiPodから音楽を聴くことは異なる。まったくちがう。だがそれは「なにをリクエストするか!?」に影響を及ぼす。

 前記、学生時代の「ブラックホーク」なら、持っていない名盤の曲や、欲しいけどまだ買えない出たばかりの話題の新曲をリクエストした。いまは名盤も話題の新曲ももっている。手元のiPodに入っている。なら何をリクエストする!?

「さっきまで新幹線の中で聞いていた曲をあらためてリクエストする」なんてこともありうる。それはむかしはなかった「形」である。



 てなことを書きつつ、ひさしぶりにダイアーストレイツを聞いている。作品から歌いかたまでいまさらながらDylanの影響を感じる。「悲しきサルタン」がヒットして、憧れのディランから声を掛けてもらえるようになる。ディランにとってもマーク・ノップラーの存在は得難いものだった。

 するとディランの「Slow Train Coming」が聞きたくなった。指弾きノップラーのストラト。

 Dylanはすべて聴いているが、この「DESIRE」あたりの音楽がいちばん好きだ。



 いまネット検索したら、「Slow Train Coming」は宗教への偏向が露骨で批判を浴びたのだとか。そうだっけ? ディランはこの時期に改宗している。「このアルバムは旧来のファン離れを招いたものの、売れに売れてグラミー賞も獲得した」とはWikipediaの文言。「ボブ・ディラン訳詩集」を買ったりしてディランの歌詞に傾倒していたのはこれよりも早い時期。このあたりになるとそのへんもいいかげん。このアルバムはLPで持っていたが処分してしまった。もったいないことをした。いまあるのはCDから入れたHDDのmp3のみ。いわれてみればたしかに宗教臭い気もする。でも所詮キリスト教内の話。いわば内輪もめ。イスラム教になったり仏教になったりしたわけじゃない。
 音楽の完成度は高い。だから売れた。けっきょく日本人が洋楽を判断するときはそっちが主になる。「王様」がやってくれたが、「かっこいいハードロックの歌詞」のなんとアホらしかったことか。その点ディランはいつだって水準が高い。歌詞の細かい部分までは覚えていないが、2枚とも大好きな「音」であるのはまちがいない。



 ここ数日、Sさんのブログから刺激を受けて連日ロック三昧である。
 でもすぐに終るだろう。ロックを聴き続けるには体力気力が必要だ。「あさだちやしょうべんまでのいのちかな」で、軟弱な私はもうすぐしぼむ。せめてたっているあいだにあれこれ書いておこう。
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  1. 2010/02/10(水) 22:23:52|
  2. 音楽
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