奥多摩の遅い春──ホッピーグラスの山桜──私の花見

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 奥多摩に出かけた。今までもなんどか出かけているが、それは電車で行ける奥多摩駅まで。
 春や秋の行楽シーズンは電車がヤマジジ、ヤマババで満員になる。まだ彼らに会う前、私はそれを老後の趣味として、健康的でいいものと思っていた。好意的だった。でも実際に電車の中で乗りあわせると、仲間同士で山のことを大声で話し、大きなザックが周囲の客に迷惑を掛けても気にしない、一方通行の粗雑な連中だった。ジジもババも。一気に嫌いになった。

 私は山好きではないし装備ももってないから、終着駅の先を歩きまわったことはない。今回はクルマで、今まで行ったことのない奥まで行った。



 杉林が多いから花粉症のひとはつらかろう。
 建築材として役立つことを考慮し、杉の植林が国策とされたころ、「土壌保全のためにも水源のためにも、ブナ等の広葉樹を植えたほうがいいのだが……」と発言された昭和天皇の見識はすばらしい。植物学者であられても、あくまでも〝象徴〟の立場なので、政治である植林事業に意見を出されることはなかったが。
 
 父母がまだ若く、姉が中三、兄が小五、私が小一という我が家が最も家族的だったころ、教員の父が休みの日曜日、五人揃って数キロ先の山まで歩き、杉や松の植林をした。苗木はトラックが山に運んでおいてくれた。
 昼は持参した弁当だ。わざと箸を持って行かず、小刀で竹を削って即席の箸を作ったりした。魔法瓶のお茶もあった。ピクニック気分で末子の私ははしゃいだ。父母は、先祖からもらった材木が自分達の家計を助けてくれたように、将来の私たちのためにそれをしてくれたのである。毎年の恒例行事だった。私の家は戦後の農地解放による没落地主だから、田んぼは小作人に取られてしまったが解放対象でない山だけはたっぷりあった。一回に二百本だとして年に二回で四百本、十年で四千本ぐらいは植えたろう。こつこつとやったものだ。都会に出た姉が缺け、兄が缺け、最後は父母と私の三人になった。父母はその当時からこども三人に分けあたえる山を選別していた。こども三人も自分達の手で植林した山の将来を夢見たが……。

 しかしそれらが育つころには安価な輸入木材が出まわり、日本の木材は伐採料、運賃のほうが高くなると見向きもされなくなった。父母も間引きや枝払いの山の手入れを放棄した。だってそんなことをしても意味がないのだから。親の落胆は私たちよりもはるかに大きかったろう。父は退職時に家を新築したが、その材料もみな新建材と呼ばれるもので、植林した山の木が役立つことはなかった。
 時が過ぎ、親が残してくれた荒れた山を見るのはつらかった。二親も死に、故郷を捨てる際に二束三文で売ってしまったけれど……。



 頻繁に猿や鹿を目にする。となると条件反射で「山野井さんのクマ」を思い出す。世界的なアルピニストであり、奥多摩に住んでいる山野井泰史さんがジョギング中に月の輪熊に襲われ、腕や顔に百ヵ所ものケガを負ってヘリコプターで病院に運ばれた事件だ。
 詳しくは私のサイトに《「岳」から「ゴルゴ13」、平山ユージと山野井泰史「情熱大陸」》としてまとめてあるので、興味のあるかたは読んでください。

 リンクを貼るのに今読み返して、山野井さんが襲われたのが「倉戸山」と知る。私が行ったのは下の地図、「峰谷川渓流釣り場」近辺で、ここにアップした写真もそれになる。倉戸山はちかい。私は山好きじゃないけれど、山野井さんのことは男としてすごいなとすなおに思っているから、山野井さんのすぐちかくにいたのかとうれしくなる。が同時に熊もちかくにいたんだなと緊張した。
 なにしろカサと物音がしたのでふり向くと2メートル先に猿が5匹でこちらを見ていたりした。しかしここは地理分類上は東京都なのだ。こういうとこでも三代住むと江戸っ子なのか。

 なおこの地域が、あの大雪のあと道が杜絶し、孤立した集落へ自衛隊のヘリコプターで食糧を運ぶことになって話題になった地域です。道路の雪除去が終ったのは3月の末だったとか。

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 奥多摩の春は遅い。2月の大雪がまだ残っている。木々はまだやっと蕾の状態。花は見えない。
 空は青くすがすがしいが、時折身震いするような冷たい風が吹きぬける。



 地元のおばさんが土筆(つくし)を採りに来ていた。こんなに涼しい(笑)のに、つくしなんか出ているのかなと思ったら、枯草の中で見辛かったけど、春はきちんとそこまで来ているのだった。「和えるのですか」と訊いたら「炒める」と言っていた。
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 清流だ。山奥の川といえば、シナの濁った川を見ることが多いので心が洗われるよう。まああちらはみな川の中でクソをするし、犬猫の死骸もみな川に流す。そこいら中、ビニールやプラスチックのゴミばかり。大切な都の水源だからと、パトロールが見回って管理しているこの川と比べることに無理がある。

 でもその比較は、もろに「日本人と支那人のちがい」に通ずる。自分達の清流感覚で、川にクソをして犬猫の死骸も流す民族と接したなら、尖閣諸島も沖縄も取られてしまうだろう。



 釣り人等、訪問するひとたちもマナーがよく、ビニールのゴミひとつ目にしないことは救われる思いだった。もちろん私もせんべいの袋やペットボトルをみな持ち帰った。
 そういう中、タバコの吸い殻がゴミとしてやけに目立った。まだまだこれを携帯灰皿で持ち帰る喫煙者はすくないようだ。なんのかんの言ってもヤニ中毒のマナーなんてこんなものである。

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 山の整理なのかかなりの量の山桜の枝が伐採されていた。
「山桜」というとこれまた反射的に藤沢周平師の傑作短編「山桜」と、その原作を大事にした映画「山桜」を思い出す。大の藤沢周平ファンとして、やっと本物が出来たと胸をなでおろした快作だった。田中麗奈も東山紀之も好演だっった。それはこちらにまとめてあるので読んでください。2008年2月に『山桜』が映画化される」と知った。それまでに藤沢作品は、共産党支持者山田洋次によってボロズタのクソ映画にされていたから、「またオレの大好きな藤沢作品が冒涜されるのか」と不安になり、まずそのことを綴った。1年4カ月後、2009年6月にDVDで観賞し、「よかった、やっと原作に忠実な藤沢作品映画が出来た」と感激するまで、思えばずいぶんと長い話になっている。

 でもほんと、よかったよかったと胸をなでおろした作品だった。なにより藤沢さんの娘さんが「やっと父の原作と納得できる作品と出逢えました」と語っているのが、我が事のようにうれしかった。今日の午後にでもひさしぶりに見直すか。

【追記】──いま確認したら、関係者の発言で最も感動的な、藤沢師の娘さんが、「やっと納得できる作品に出逢えました」と語っているサイトが消えていた。リンクしたが繋がらなくなっている。2009年のものだから消えて当然か。しかしこういうことがよくあるから、こういう重要なものはコピーして自分のサイトに挿れておくしかない。あれを読んでもらえないのが残念である。言外で痛烈な山田洋次批判になっている貴重な発言だった。



 大量に伐採され、道路際に放置されている山桜(太い幹は直径10センチもある)に、いっぱいの蕾がついていて、それがまだ生きている。けなげでうつくしい。幹の切り口から見て、切られて一日二日のようだ。(この写真も撮っておけばよかった。)

 私は切り花が嫌いだ。花は野に、そのままにあるのがうつくしいと思っている。だから野にある山桜の枝を切りとって自室に持って帰るなんてことはしないが(と書くと、藤沢師の『山桜』はそれをする物語だから師の作品の否定になってしまうけれど)、今回は伐採された枝に着いている、このままだと咲くこともなく終る蕾だから、これは人助けならぬ花助けで、やってもいいのではないかと判断した。
 通りかかった町のひとに問うと、明日辺りダンプが来てこの伐採された木は処理場に運ばれるらしい。ならやっぱり「花助け」である。ここから持ち帰り、自室で咲く山桜を想う。カッターで一枝だけ手にした。



 それが先週の金曜日。
 一週間後の今日、やっと咲いてくれた。待ちかねた。咲いたらここにアップしようとたのしみにしていた。
 パソコン机の上に置いて記念写真。

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 活けてあるのはホッピーグラス(笑)。通販で買ったのがふたつあるので、そのひとつを一輪挿しにした。
 水に色があるのは赤ワイン。液肥がないので、せめていい気持ちになってくれと、すこしばかり注いだ。

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 今年の私の「花見」は、机の上の山桜である。
 今日はこれをかたわらに、映画「山桜」を見よう。
 酒はワイン? いややっぱ日本酒だな。山田錦精米50%の大吟醸を奮発するか。 
 あしたは桜花賞。阪神の桜はどうだろう。

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【補記】──プログは時間食い虫

 ひさしぶりに写真を多用した文を書いたら、写真の選別や加工やアップ(これが面倒)、リンクを貼ったり、文章の読み直しで完成まで2時間以上かかってしまった。やっぱりブログなんてのは閑人じゃないとできないね。一日中ツイートしている<きっこさん>がいかに何もしていないひとかがわかる。ありゃ異常だ。まともな生活じゃない。どうして喰っているのだろう。近所の親切なひとたちに世話になっているのか(笑)。

 とはいえ土曜日の早朝、待ちかねた山桜の開花だったから、充実した愉しい2時間だった。 奥多摩の雰囲気を感じてもらえたらさいわいです。
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