「文字打ち内職」の思い出②──知人の紹介で始まる寸前まで──【補稿】の不自然な打鍵の遅さ

 腰を痛めて何ヶ月も寝た切りになり餓死寸前まで追い詰められた頃、このバイトを紹介してくれた知人がいた。私はそんなアルバイトがあることを知らなかった。トイレに行くだけでも激痛にのたうちつつ這って行く状態だったが、腹の上に載せたノートパソコンで文字打ちなら出来る。幸いにして頭の方はまともであり、貧困で痩せ細り、よけいな脂肪が落ちてむしろ冴え冴えとしていた。こんな仕事があったのかと天の恵みに感謝した。



 紹介してくれた知人は、長年勤めた会社が倒産し派遣社員をしていた。その他にもこれを、すこしでも家計の足しにと自宅で何年ももうやっているらしい。学生の息子と娘がいて、彼らのためにも一円でも欲しいとがんばっていた。
 私の悲惨な状況を知り、この仕事なら出来るのでないかと教えてくれた。とてもギャラが安いバイトであり、勧められるようなものではないのだが、と遠慮しつつ、もしもこれでいいなら紹介しますと言ってくれた。







 彼は、「文字打ち内職」の納品をしているひとの連絡先を教えてくれた。そのひとは個人でやっているようだった。そのひとから「指令」が来て、それに従った「文字打ち」をする。それをメールでそのひとに届ける。翌月、それに応じたギャラが支払われる。そういうシステムのようだった。
 会社組織ではないようだ。ということはもっと複雑な構成になっているのだろう。彼が子受けであり、紹介してくれた知人や私は孫受けになるのか。でも早速そのひとからPDFの契約書のようなものが送られてきて、電子メールのやりとりではあるが、きちんとした仕事であることは確認できた。


 知人が私のことをどう紹介したのか知らないが、というか知人は私がどんな生きかたをしてきたか知らないのだが、それでも適当に褒めてくれたのだろう、「納品するひと」のメールには、「あなたは実績があるようだから特別に高いレベルの給料を払ってあげましょう」のようなことが書いてあった。


 それによると「初めての人は1000字200円からだが、あなたは文章書きの実績があるようだから、特別にベテランと同じ1000字300円からのスタートにします。実績を積むと1000字500円まであげることが可能です」とあった。



 私がライターとして活動を始めた30年数年前の稿料は400字原稿用紙換算で「1枚3千円」が多かった。これが私の経験した最低稿料になる。その後もそれ以下は経験したことがない。だいたいは「1枚5千円」、景気のいい会社だと「1枚7千円」だった。広告系や会員系の特殊雑誌だと「1枚1万円から2万円」くれた。私が「1枚7千円」で落ちついている頃、年下の新人ライターが「1枚2000円」だと嘆いていた。エロ雑誌に編プロ経由で書くとそんなものらしい。私は編プロというのとは関わったことがないのでわからない。
 2ちゃんねるの「きっこスレ」というのを読み始めた頃、そこに「編プロを知らないヤツはライターじゃない」という意見がありおどろいた。長年ライターをやってきたつもりだったが、私は編プロ経験がないからライターじゃないのかと思った。原稿というのは編集部から発註され編集者と打ち合わせをして書くものと思っている。いまだにこの「編プロを経験してないヤツはライターじゃない」という意見は意味が解らない。

 コピーライターとしての私の格は、ひとつで10万ぐらいだった。シリーズ物として長年やってそれなりに稼いだ。楽で儲かるようだが、コピーは要求がキツく、ボツが多いし打ちあわせも面倒なのでそうとも言えない。そしてまたNGだと言ってくるスポンサーからの意見が「本気かよ!?」と思うようなアホなものが多かった。私は好き勝手に書ける原稿のほうが楽しかった。同じく上記広告系の原稿は率がいいが、やはり制約が多い。自由が一番だと思ったものだ。M先輩が廻してくれる地方ラジオ局の仕事はギャラは安くても楽しかった。感覚の合うひととやる楽しい仕事が一番だ。
 ラジオの構成料の方は月極めだ。1本の契約が10万円だとすると1週25000円。量は原稿用紙換算で5枚ぐらいだったから、やはりここでも「1枚5000円」ぐらいだったことになる。バブルのころは1本が20万円だったりした。







 そんな感覚でいたから、「文字打ち内職」が安いことは覚悟していたが、「1000字300円」には戸惑った。原稿用紙に字数換算すると「1枚120円」である。それだって新人は「1枚80円」なのを特別に高くしてくれているらしいから文句は言えない。他人の書いた文字を書き写すだけだから安くて当然である。クリエイトではないのだ。指先の肉体労働である。


 1時間に3000字打てば時給900円のバイトになる。肉体労働の現場が時給850円の世相だから、私のような寝た切り廃人のかたわが出来る仕事としては最高の部類になる。寝た状態でお腹に載せたノートパソコンでは「1時間3000字」は無理かも知れないが、椅子に座れるようになり、自作のデスクトップ機とキイボードに向かえば、それは楽々とクリア出来る数字である。腹の上に載せたノートだと1時間2000字、時給600円かも知れないが、それでも8時間やれば4800円になる。そういう気力はある。なんとありがたい仕事を紹介してくれたのだと知人の住む方向に両手を合わせた。



 その知人は派遣の肉体労働をしていた。早朝から夕方まで働き、くたくたになって帰宅し、食事のあと、眠るまでの数時間をこの内職に当てている。打鍵も速くなく、一日に出来るのは千円程度だという。2時間で3000字ぐらい打つのだろうか。月に3万円にしかならないが、妻と息子娘のためにがんばっている。もちろん奥さんもパートに出ている。







 「納品するひと」から連絡が来た。最初の仕事だ。知人に負けないよう私もがんばらねばと、気合を入れて起き上がろうとする。寝た切り状態から、ノートパソコンを両手でお腹から降ろす。ゆっくりとゆっくりと、まずは躰を裏返し、次いで片ひざを突き、慎重に四つん這いになる。この辺のかっこうはよくある比喩だが「産まれたばかりの仔馬」のようだ。それからすこしずつ上体を起こし、くの字型のかっこうで、襖のへりを掴んで立ち上がる。躰はプルプルと震えている。すこしでも多く打てるデスクトップ機でやろうと思った。なんとか立ち上がって机までたどり着きたい。だがすぐに激痛が走り呻き声をあげつつうずくまる。やはりノートでやるしかないようだ。この辺、志村けんの演じるよいよいのじいさんとまったく同じである。他人から見たら滑稽なことだろう。腰痛はおそろしい。足が1本なくても松葉杖で歩けるが腰痛は両足があっても歩けない。


 なんとしてもがんばらねばならない。こうして私の「文字打ち内職」は始まった。いや、始まるはずだった。(続く)

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【補稿】──内職でも高給な<きっこさん>──なのになぜ打鍵が遅いのか!?

 私は<きっこさん>のツイッターをフォローしていない。ほとんどツイッターをやらないので、<きっこさん>の「文字打ち内職」の細かな〝設定〟を知らなかった。

 2ちゃんねるの「ニュース議論」板に<きっこさん>スレがある。もうPart45までいっている。3年前まで知らなかった。あるにちがいないとは思っていたが、「ニュース議論」は盲点だった。
 ここには全国の<きっこさん>ファンが集い、<きっこさん>への熱い想いを語っている。私もたまに参加させてもらう。2ちゃんねるで書きこむことのある唯一のスレだ。URL はこちらです。<きっこさん>ファンはぜひ読みに来てください。



 そのスレに、<きっこさん>の文字打ち内職に関するコピーがあり、<きっこさん>は「100字で50円から70円」なのだと知った。正直おどろいた。その理由は私の上の給料と比較すればわかる。
「100字で50円から70円」ということは、1000字では500円から700円。1時間に3000字は打てるから、すると時給は1500円から2100円。1日10時間働ければ日給15000円から21000円。土日を休んで月に22日働くと月給は33万円から46万円。土日も5時間は働くとして6万から84000円のプラス。すると月給は39万円から54万円になる。通勤ラッシュとは無縁に、在宅でやる内職としては破格の高給になる。西日本に放射脳エア疎開をしている<きっこさん>は、こんな率のいいバイトをどこで見つけたのだろう。

 やはり<きっこさん>は私のような便所虫(copy by kikko)下層階級とちがって「文字打ち内職」でも格が違うと思い知った。私の契約書では、上記したように最高額でも「1000字で300円」、それも特別に普通は200円なのに優遇してもらったものだ。1時間に3000字打っても900円が精一杯である。いま東京都の最低時給は869円。アベノミクス効果で、この10月に850円から19円あがった。それが現状である。
 なのに<きっこさん>は遊び遊びやる内職ですら時給1500円から2100円だ。私なんかとは格がちがう。しみじみとすごいひとだなと思った。



 しかしまたへんなことにも気づいた。<きっこさん>はそういう「100字で50円から70円」という私なんかからすると羨ましいほど率のいい内職をしているのに、「月曜から金曜まで毎日6~8時間働いて月収5万円」と書いているのである。月に20日間働いて5万円ということは一日2500円。8時間働いて2500円ということは時給300円。「100字50円から70円」で時給300円ということは、<きっこさん>が1時間に書く文字は、400字から600字となる。これはかなりというか、相当に変である。<きっこさん>は、おそろしく打鍵が遅いことになる。あれだけツイートしまくり、長文のブログ文を書いている人が、そんなに遅いとは考えがたい。
 <きっこさん>は、あの森羅万象に通じた智性と諧謔とオリジナリティに満ちた麗しいブログ文を書くときでも1時間に2000字は軽いだろう。3000字は行っていると思う。麗しいオリジナルネタを書くのですらそれぐらい速いのに、なぜ単にすでに書かれている文を打ちこむだけの内職で、こんなに遅くなるのか。いくらなんでも不自然すぎる。
 ツイートは140字限定である。1時間に400字というのは、丸々一時間かけてツイートみっつ書けないということだ。いくらなんでもこれは……。またまたお得意の〝設定〟ミスか!?



 ちなみに現在健康な私は、このブログ文のような好き勝手なことを使い慣れた自作デスクトップ機で書く場合、時間6000字は書ける。それは「原稿用紙区切り」というのを表示してくれるテキストエディターで確認している。正しくは「原稿用紙15枚」だから6000文字はないけれど。(まったくどうでもいい話だが、私はその辺にあるパソコンで書けと言われてもなにも出来ない。あまりに自分用パソコンをカスタマイズしすぎ、自分のパソコンでないとなにも出来ないヒトになってしまった。CapsLockを左Ctrlに入れ替え、長年使っているATOKがあっての話である。)

 と書くとかなりの早書きのようだが、ラフに書き上げたそれを、用語を直したり、連続する語尾を修正したり、並びを入れ替えたり、インサートしたりして、何時間もかけて仕上げるから、平均時間にしたら時間5枚ぐらいになるだろう。でもこういう「文字打ち内職」にそんなものはいらない。ただ機械的に打つだけである。あれだけ長文のブログを長年書き続けてきた<きっこさん>が時間400字はありえない。それは沈思黙考しつつ原稿用紙に万年筆で、一発勝負(=書き直し、修正のない)の随筆を書くときの速さだ。「文字打ち内職」がそれでは稼ぎにならない。



 まさかまた知りもしない「文字打ち内職」のことを、適当に「これぐらいの値段だろう」と〝設定〟して書いてボロを出したのだろうか。<きっこさん>の美貌にあこがれる男のひとりとして、そんなことは考えたくない。私の夢は、ダービーの日、東京競馬場6Fの優駿特別室(豪華な酒肴が用意されている)に<きっこさん>と<母さん>を招待し、石川喬司先生と一緒に4人で歓談することである。いや、4人でハッパを回しのみするのもいいなあ。石川先生も<きっこさん>の美貌には興味津々のようで、お会いする日を楽しみにしていた。この「特別室に<きっこさん>と<母さん>を招待」は石川先生の力をもってすればすぐにでも叶う。簡単だ。いやそれこそ今秋の天皇賞でもジャパンカップでもすぐに出来る。問題はお二人がそれを受けてくれるかどうか。受けないだろうなあ。来ないだろうなあ。絶対に受けられない理由があるから(笑)。
 憧れの<きっこさん>が、知りもしない内職を適当にでっちあげたとは考えたくないのだが……。
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  1. 2013/10/01(火) 14:43:17|
  2. きっこ
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