ある護憲作家の自伝を読んで──日本人の堕落は平和憲法を愛さなくなったから???

○ある護憲作家の自伝を読んで

 昨年、仕事の下調べである護憲作家の自伝を読んだ。その感想である。
 私は彼が護憲派だと知らなかった。それはよかったと思っている。知っていたら政治思想のちがうそれに身がまえていたろうし、仕事に必要とはいえ、大部のそれを熱心に読む気にはならなかったろう。背景をなにも知らなかったから素直に読め、素直に読んだからこそ、途中から「あれれ?」と思ったことを、素直にここに記せる。


 反骨の硬骨漢である彼は、現代の日本の風潮を、かつては気骨と気品のあった日本人の堕落として厳しく批判していた。男子が親からもらった黒髪を金髪に染め耳ピアスをするような風潮や、援助交際という名の十代の娘の売春行為、食べ放題の店で高そうな食材だけを意地汚く喰いまくる主婦の生態、それらを嘆き、怒っていた。自身の生活に関しては、家を持たない、クルマを持たない、携帯電話もパソコンも使わないことを信条としていた。蛇足ながら、家やクルマを持たないというのは、持てる程度の収入はあるが、そういう物品を保有することによる安定を望まない生きかたをしてきたという主張である。
 
 本題に進む前に細かいことに難癖をつけるようで気が引けるが、この携帯電話やパソコンを使わないことが彼の硬骨漢としての人生に意義があったかどうかは疑問だ。なぜなら彼はファクスは愛用していたからだ。これで、生涯手書き原稿でファクスすら拒んだ、となるとさらにその〝拗ね者人生〟に一目置くのだが、使いこなせたファクスは重用したらしいから、となると、ケータイやパソコンの否定は、単に最新機器に乗り遅れただけとも言える。実際病床に伏した晩年は携帯電話を欲しがったという話も伝わっている。
 それはともかく。


 新聞社の社会部記者として率先して社会悪に挑み、真っ向から闘い、危険な体験取材を試み、結果そこからの感染により、満身創痍となって散ったこの作家の波瀾の人生は尊敬に値する。前記したような現代の風潮への批判もすべて同意できる。肯きつつ読み進んでいたのだが、自伝も後半に進み、病床から総論を述べる箇所に到って首を傾げることになった。

 彼は前記したように堕落した現在の日本を嘆く。基本としてあるのは「むかしはよかった=むかしはまともだった」だ。そこまでは私も一緒である。

 しかし彼の考えるその原因を読んで愕然とした。それにはとても同意できなかった。彼は「以前の日本は、日本人は、まともだった」とし、「なにゆえこんなに堕落してしまったのか」と嘆き、その堕落の理由を「平和憲法を愛さなくなったから」としていたのである。
 これはいくらなんでも無理がある。


 彼のリクツによると、「1960年(昭和35年)の安保闘争までの日本はまともだった」となるらしい。アメリカとの安全保障条約を廃棄しようという闘争は、現行の憲法(=彼の言う平和憲法)を護る闘いであり、平和憲法を愛していた時代の日本人は、礼節からしてまともだったという主張になる。
 それが60年安保闘争で敗れ(=条約更新)、70年の闘争でも敗れ、そのことによって日本人が平和憲法を愛さなくなり、日本人の大多数が改憲派になってしまったので、日本という国は、日本人は、前記したような茶髪から売春、飽食まで、ひたすら堕落するようになった、というのが彼の意見の骨子である。


 これはちがうだろう。まず、あの戦勝国が敗戦国に押しつけた「二度とあなたには逆らいません。二度とケンカしません。ケンカしないように手足を縛って動けないようにします」という醜悪な憲法もどきを「平和憲法」と呼ぶのには抵抗があるが、とりあえず進行上そう呼ぶことにして話を進める。

 日本が第二次世界大戦以後60有余年、一度も戦争をしていない稀有な国であることに、その平和憲法(割り切ったつもりでもこんな言いかたはしたくないなあ。抵抗がある)が寄与しているのは確かだ。だって憲法で「絶対ケンカしません」と謳っているのだから出来るはずがない。
 
 しかしそれ以上に、現実として、他国に侵掠されず戦争をすることなく今まで来られたのは、安保でアメリカに護られてきた(アメリカが護るだけの地理的価値があった)からであり、実質的軍隊の自衛隊が存在したからである。相反する安保と平和憲法の二本立てで戦争と無縁でいられたのだ。

 比重はもちろん安保である。いくら「わたし達は平和を望みます。戦争はしません」と言ったって攻めてくる国は攻めてくる。それは敗戦後のソ連進攻が証明している。「平和憲法があったから日本は戦争をせずにすんだ」はただの御題目に過ぎない。「わたし達は憲法で戦争を放棄しています。わたし達は戦争はしません」というキレイゴトを、日米安保という自衛隊という現実的な軍事力が支えていたのだ。(続く)
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  1. 2013/09/25(水) 10:41:05|
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